横浜流星主演の映画「線は、僕を描く」を見に行った友人からお土産に椿のキーホルダーをいただきました。
原作は本屋大賞受賞でも話題になった砥上裕將(とがみひろまさ)著の同名の本(講談社文庫)ですが、ここで椿が登場するかについて、映画だけ見た彼女と原作だけ読んだ私の間で情報交換。
(以下、ネタバレあります)
映画では水墨画の巨匠・篠田湖山の孫で、若き才能ある画家・千瑛が描いた一重の椿の花を見て主人公・青山霜介が心を動かされる場面があり大事なモチーフになっている。最後に椿は亡くなった妹の名前だということも判明。
なるほど、そこまで物語の鍵となるモチーフならこのキーホルダーはうなづけます。
原作本では、千瑛は椿の花を描くけれど、色々あり画家として一つ成長した彼女の描いた作品として椿の花は登場します。これはこれで重要なポジションです。(亡くなった妹の設定もエピソードもありません)
映画は見ていませんが、設定や椿の扱い方を聞いて、原作と目指すところが違う様な印象を受けました。
小説は、静かに揺蕩うように始まり、流れてゆく文章に身を任せて読み進むうちに、家族を失うことで止まった主人公の世界が、描くことで開かれ、再び結びついてゆく感覚が心地よい読後感となりました。主人公の青山霜介君、結構な巻き込まれ体質ですが、盲目的に人に従う訳ではないので、素直に人に導かれてゆく姿は好もしく映ります。特に自分自身の力で前に前に進めない時には心ある人についてゆくことで道が開かれることもあるのだと感じました。虚無の心に新しいものを入れることを恐れない、彼は実は強い人ですね。