【椿の名所】 赤崎 椿の森

【椿の名所】 赤崎 椿の森

鳥取県の赤崎にある個人所有の椿の森を訪ねました。招いてくださった若いご夫婦の案内で広い庭内を散策すると、大きく育った椿の木があちらこちらで花を咲かせています。花盛りを迎えた有楽椿の桃色の花が歩く先々に現れては庭を華やかに彩っていました。

加藤三良右衛門さんの椿の森

4.5ヘクタールという広い敷地には、クスの巨木や、ナツツバキ、トチ、モミ、イチョウ、ユリの木、サルスベリ、トウヒなど様々な木々が生い茂っていました。中でもツバキは多く、ヤブツバキはもちろん、園芸品種がおよそ800種2,000本以上もあるといいます。

ここはかつてツバキ栽培を行い、35歳から60年間にわたって「椿の森」を作った加藤三良右衛門(かとうさぶろうえもん)という方の住まいでした。

三良右衛門さんは終戦後に農家、サツキ栽培家を経て、ツバキ栽培家を始めたそうです。全国から苗木を取り寄せて栽培し、実生で育種もしました。

往時の庭はツバキをはじめ多種多彩な花木や茶花、山野草などが彩り、苔が青々と地面を覆いっていたとのことです。95歳で亡くなるまでここで椿を育て、近隣の方々に茶を振る舞い、書を愉しみ暮らしておられたそうです。

現在、家主不在の椿の森は、ご家族や近隣のボランティアによって維持されています。加藤三良右衛門さんの孫にあたるご夫婦は、手が周り切らないのだと嘆いておられました。

福島百合 赤崎 椿の森20240312

椿の森の散策

それでも平らな道が通されて区画に分けられた庭は歩きやすく、また変化に富んでいて、魅力的な庭です。大きなクスが何本も聳え立ち、トトロの森を思わせます。

中央の辻にはクスとツバキが寄り添うように立っていました。ツバキに近づくとフワリと香りがしました。どうやら有香のヤブツバキのようです。真紅の花が雨に濡れてとても綺麗でした。

楠と椿 20240312
ヤブツバキ(有香) 赤崎 椿の森20240312

訪問日の天気予報は雨でしたが、ちょうど雨が上がりました。濡れた土を踏んで歩きながら水気の多い空気を吸い込むと、春まだ浅い頃の土や草木の匂いがします。ゆっくり時間が流れる気持ちが良いひと時を過ごしました。

近隣の方々との友愛を愉しみ、美しい庭を楽しんだというその方を私は知りませんが、その息遣いはまだ残っているようです。

花盛りを迎える4月上旬には椿の森の散策ツアーもおこなわれ、参加者は椿の森の春の景色を楽しんだようです。

ご夫婦はこれから少しづつ手を入れて椿の森を整備してゆくとのこと。次に訪問する時はどのように変わっているか、これから10年、30年後にどんな椿の森に育っているか今から楽しみです。

見ることのできたツバキ

<2024/3/12>

<訪問日:2024年3月12日 曇り時々雨>

データベース

【名称】赤崎 椿の森

【コレクション】 約800種、2,000本以上(実生含む)


【花期】3〜4月花盛り

【所在】鳥取県東伯郡琴浦町別所799-2

【備考】個人所有地、通常一般公開せず

【公式サイト】https://www.instagram.com/i_love_flower_forest/

アクセス

・赤崎駅(山陰本線)より車で15分

参考文献

  • 赤崎 椿の森資料
  • 公式Instagram:https://www.instagram.com/i_love_flower_forest/
  • 八橋町(まち)楽会フェイスブック:2020年4月3日「ツバキの季節に遺徳をしのぶ「加藤三良右衛門書展・2」に寄せて(南場兄一)」(2020/04/04「日本海新聞」)

 

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