東京農業大学の厚木キャンパス内には造成中のツバキ園があります。傾斜地に約130品種あります。植栽されたのは以前のようですが暫く放置され、近年、農学部のS先生らが再整備を開始したとのこと。今まさに再生されつつあるツバキ園です。農大という専門学舎にあるツバキ園が今後どのように整備されて行くのか注目です。
2025年2月ツバキ園見学会
東京農業大学農学部のS先生に造成中のツバキ園を案内していただく機会を得ました。最盛期にはやや早い2月半ばですが、ツバキ園や構内に咲く椿の花を見学しました。
本厚木駅からのバスを大学正門前で下車し、警備の方に挨拶をすれば誰でもキャンパス内に入ることができます。校内を奥へ続く道の左手には濃い緑の葉をした数十年ほどのツバキが見られます。更にまっすぐ進むと右手に第二講義棟があり、その前に鉢植えのサザンカや地植えのツバキがあります。ツバキに「調査中」と書かれた札が付けられているのが学舎らしい感じです。
「東京農業大学 厚木キャンパス 花MAP 秋 Part 1」によれば、これらに並んで秋には早咲きのツバキ品種「炉開き」が見られるそう。また研究棟の裏手付近ではチャノキの花が見られると紹介されています。
ツバキ園に行く前に寄り道をして第二講義棟の裏に回ると、あちこちにツバキの植栽が見られますが、赤白の花が咲くツバキがひときわ目を引きました。鮮やかで濃い赤地に白斑が複雑に入ったツバキです。
ツバキ園の場所は学内の主道沿い、学生会館を左手に見ながら少し進んだあたりです。

近づくと木々の間に「つばき園」の文字が見えました。入り口には竹に生けたツバキが飾れていて私たちを歓迎してくれています。茂った木々の中に入ると細い道と木材で土止めした階段が下に続いており、落葉に覆われた傾斜地に3〜4mに育ったツバキが鬱蒼と茂っています。
メイン通路を下り切るとちょうど盛りの太郎冠者が明るい桃色の花で出迎えてくれました。
全体に花がポツポツと咲く中で他にも盛りを迎えている「菊冬至」やハルサザンカ系の「笑顔」が華やかです。

数輪咲いていた薄桃色に白斑が入るツバキはとても優しげで上品な花姿で見惚れました。名札に「花橘」とありました。
紅侘助、「玉兎(たまうさぎ)」(別名:白菊)、白玉、初雁、雲竜、西王母、春曙紅、日本錦と思しき花などもとりどりに咲いており、散策は宝探しのように楽しいものになりました。
茶畑
ツバキ園に続いては茶畑に見学です。研究棟の裏手に回ると、見下ろした傾斜地にVの字型に植えられた立派な茶畑が広がっていました。機会があれば是非ともこのお茶を飲みたいものです。

ツバキ園のできた経緯と再整備
このツバキ園は長らく放置してあったのを近年杉山先生たちが整備を始め、現在品種同定中だそうです。それが終わってから剪定をして椿の生育に適した環境を順次作って行くとのことでした。すでにほとんどの木には名札や解説がつけられていいます。品種一覧や植栽地図も作られており、ツバキ園は着々とできつつあるようです。
杉山先生にこのツバキ園ができた経緯を伺うと、花芸家の安達潮花氏のコレクションの一部を東京農業大学世田谷キャンパスで預かった経緯があり、その後厚木キャンパスに移植されたものではないか、とのことでした。椿愛好家として名高い安達潮花氏の椿邸として知られた住まいは世田谷にありましたし、長女で花芸安達流の初代主宰である安達曈子氏は東京農大の客員教授を務めていらしたこともあるので信憑性のあるお話です。またそうであれば横浜にあるこどもの国つばきの森の安達潮花コレクション(資生堂が創立100周年記念事業として買い取り寄贈した)の兄弟分ということにもなります。
かつての大椿愛好家たちが慈しみ育てた椿コレクションは、現在その多くが失われていますが、時折その後裔たちに巡り会うことがあります。ここもそうなのかもしれません。
見ることのできたツバキ・サザンカ
2月
<2025/2/8、2025/2/15>
- 角葉白玉 東京農業大学厚木20250208
- 紅乙女 東京農業大学厚木20250208
- 残雪 東京農業大学厚木20250208
- 昭和侘助 東京農業大学厚木 つばき園20250208
- 大白玉 東京農業大学厚木 つばき園20250208
- 白妙蓮寺 東京農業大学厚木20250208
- 玉兎 東京農業大学厚木ツバキ園 20250215
- 紅侘助 東京農業大学厚木20250208
- 太郎冠者 東京農業大学厚木 20250215
- 初雁 東京農業大学厚木ツバキ園 20250215
- 笑顔 東京農業大学厚木ツバキ園 20250215
- 笑顔 東京農業大学厚木 つばき園20250208
- 西王母 東京農業大学厚木 20250215
- 雲竜 東京農業大学厚木ツバキ園 20250215
- 雲竜 東京農業大学厚木ツバキ園 20250215
<訪問日:2025/2/8(土)晴れ、025/2/15(土)晴れ>
データベース
【名称】東京農業大学厚木キャンパス ツバキ園
【コレクション】(品種名がわかるもの)129種ほか、約230株
【花期】12〜4月
【所在】〒243-0034 神奈川県厚木市船子1737
【備考】
・ツバキ園はキャンパス内で自由に入れる
・問合せ:
【公式サイト】東京農大厚木キャンパス:https://www.nodai.ac.jp/campus/map/atsugi/
アクセス
・小田急線本厚木駅南口14番乗場より神奈中バス「厚109東京農業大学行」にて約15分、終点東京農業大学下車
参考文献
・2025/2/15ツバキ見学会資料
・東京農大キャンパス内ツバキ園の場所,杉山立志,2025
・東京農業大学厚木キャンパス花MAP 秋 Part 1:https://www.nodai.ac.jp/farm/flowermap_autumn1.pdf
・最新日本のツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010