2019年の美しい椿のカレンダーを手に入れました。
大阪の富士精版印刷株式会社は精密な印刷を得意とし、「日本一美しい印刷のできる印刷会社」を志に掲げる印刷会社です。自社の印刷技術を披露するカレンダーは、色の表現力豊かな特別なインキをを使用しているそうです。そのためか、カレンダーの椿は赤い色の発色が良く、立体感のある写真です。背景の緑が深めの色なので花が際立って見えます。飾って美しいカレンダーとして楽しめます。
表紙の「明石潟」(あかしがた:Akashigata)は江戸時代からある品種で、三倍体品種のため極大輪の大きな花を咲かせます。
1月の「蓮上の玉」(れんじょうのたま)は白い八重で名前のイメージと様に清らかな印象です。
2月は「不如帰」(ほととぎす:Hototogisu)。蓮華咲きの愛らしいピンクの椿花です。
3月の「蜑小舟」(あまおぶね:Ama-obune)も江戸時代からある品種。朱紅色が印象的です。
4月は「土佐有楽」(とさうらく:Tosa-uraku)で、太郎冠者(別名有楽椿)と呼ばれる品種の実生と推測されています。太郎冠者より少し大きい花です。
5月の「五色散椿」(ごしきちりつばき)は図鑑には五色八重散椿(Goshiki-yae-chirituubaki)と載る品種でしょうか。写真の花は白地に薄紅色の縦絞りが入った花と紅色の花ですが、「五色」と呼ばれるように、一本の木で白地に紅色の縦絞りを基本に、白、紅色、桃色、白覆輪などに咲き分ける椿です。京都の柊野の奥村家に大きな古木があります。(椿旅 京都柊野 奥村家の五色八重散り椿)
6月ともなると さすがに椿の花の時期は終わっています。 この月を飾る「国の光」(くにのひかり:Kuni-no-hikari)は梅芯、一重の平開咲きが特徴の肥後椿の一つです。
7月の「酒中花」(しゅちゅうか:Shuchuka)は白地に紅覆輪、紅色の縦絞りという印象的な姿です。江戸時代からある品種です。
8月の「大虹」(おおにじ:Onij)は、表紙の「明石潟」に白斑が入ったものでやはり大きな花です。花弁の上に現れるオーロラ状の模様の出方は花ごとに異なるので、美しい文様を探素楽しみがあります。
9月になると咲く園芸品種の椿もありますが、この「松笠」(まつかさ:Matsukasa)が咲くのはもっと後です。名前の通り松ぼっくりのような花形が可愛らしい椿です。
10月の「福娘」(ふくむすめ:Fukumusume)という名を聞くと福の神のようにふっくらとした優しげな印象の 娘さんをイメージします。 福岡生まれなの椿なのでそれも掛けているのかしらと思っています。
11月は「王昭君」(おうしょうくん:Oshokun)という古代中国四大美女の一人にあやかったのではと思われる端正な花形の椿。淡い桃色地に底は濃く弁端は白くなるという花容はやはり麗しいですね。
12月で歳の終わりを飾るのは「宝合」(たからあわせ:Takara-awase)。図鑑には、白地に紅色の縦絞や紅色地に白斑、と模様の説明がされています。花の模様のバリエーションが多そうです。
それぞれの月のきれいな写真と解説は公式サイトをご覧ください。
2019年『椿』カレンダー・解説
この「椿カレンダー」 は1997年に始まり、途中で休みなどもあり今年2019年版が6年ぶりに刊行されました。
仕事でご縁があり、先日訪問した折に歴代の「椿カレンダー」、全15点を見せていただきました。
壮観です。
表紙だけなのに、これだけ並ぶと長年続けてきた歳月の重みを感じます。
面白いのは、2019年版のカレンダーにはAR機能を搭載していることです。
AR( Augmented Reality )は拡張現実と言われるコンピューター技術で、 現実環境に情報を付け足したり削除したりします。例えば スマートフォンを通して見た風景の上に、その場所の情報をオーバーレイして示すなどです。「ポケモンGO」や「 Ingress 」と言えば分かり易いでしょうか。十年以上前のアニメ「電脳コイル」の世界観にも通じるものがありましたっけ。
余談が過ぎましたが、この椿カレンダーにおいてもそうしたARによって、ちょっとしたお楽しみの幅が広がっていました。カレンダーの 表紙と12か月の椿の写真に ARアプリをかざすと、それぞれの椿の品種についての文字と音声による解説が体験できるのです。なかなか面白いしかけです。
古式ゆかしく日本の風土に根付いている椿ですが、その楽しみ方を今の時流に合わせることで未来につなげた感じです。印刷会社の心意気を見た気がしました。