東京文京区根津にある根津神社では、月替わりで図柄の変わる花御札(はなみふだ)という護符を頂けます。月次花御札(つきなみはなみふだ)といいます。多くの御神札は神霊やその力を象徴する図像を木や紙などに記していますが、根津神社の花御札は1月から12月の隔月に季節の花の描いた木札です。月毎にその月の花絵が描かれた木札があります。
そして、12月が椿の図柄。
小石川植物園でツバキとサザンカを見てから足を延ばして根津神社にお参り、初穂料500円をお納めして頂いてきました。
花御札は正目の杉板の木札で、そこに紙に包まれた一重の紅椿の花と蕾が描かれています。裏には根津神社の文字。花御札なるものを手にするのは初めてだったので、社務所の方にどのようにすればいいのかを尋ねると「家の中に邪気を入れないように玄関の内側にまつりください」とのことでした。
月次花御札に描かれたそれぞれの月の花は、
1月松、2月梅、3月桃、4月躑躅、5月菖蒲、6月竹、7月梶、8月撫子、9月菊、10月楓、11月南天、12月椿。これらにプラスして、5月5日の端午の節句から9月9日の重陽の節句までの5ヶ月間は薬玉(くすだま)の図柄も登場します。全部で13種類の図柄ですが、薬玉の図柄があることに興味がわきます。
薬玉はその名の通り香草や薬草を錦の袋に摘めて作った玉に五色の糸を垂らしたものです。五月五日の端午の節供に柱に飾り、蓬(よもぎ)や菖蒲(しょうぶ)などの香りによって邪気を祓うといいます。九月九日の重陽の節供には香りの薄まった薬玉を新しく作った茱萸袋(しゅゆぶくろ)に取り替えました。
中国から伝わり日本でも奈良時代や平安時代の宮中でも行われた習慣のようで、『源氏物語』にも光源氏が女性たちに薬玉を贈る場面がありましたっけ。
元々が中国で薬草を摘み、邪気を遠ざけて無病息災を願う習慣だそうなので、根津神社の花御札に健康のご利益があるのもうなづけます。
根津神社は古い神社で、今から1900年余の昔に日本武尊が千駄木に創祀したと伝えられ、江戸時代五代将軍徳川綱吉が千駄木より現在の場所に御遷座し社殿を奉建しました。御祭神は須佐之男命、大山咋命、誉田別命。
神社のお参りに行ったのは2017年12月9日でしたが、境内はちょうど満開を迎えたサザンカの木があり、旅行者らしい女性たちが楽しそうに写真を取り合っていました。