高円山白毫寺(こうえんざんびゃくごうじ)は奈良の若草山から南に春日山に続く高円山(たかまどやま)の麓の高台に位置しています。百段余りの石段を登りつめた境内からは、奈良を取り巻く山並みや丘陵、奈良市街が一望できて素晴らしい眺めが広がります。
白毫寺の五色椿は、東大寺開山堂の糊こぼし、伝香寺の散り椿と並ぶ奈良三名椿の一つ。花色は紅色、白、桃色、縦絞などを咲き分け、咲き方も八重、一重、唐子が入り混じるという多彩さ。別名の奈良七福神は、こうした花のバリエーションの豊かさから来るのでしょうか。品種名は白毫寺五色。この木が原木だといいます。
案内板によると寛永年間(1624~1645)に興福寺塔頭、喜多院から移植したものだといい、パンフレットによると樹齢およそ450年という古木。県指定の天然記念物です。
根元には苔が敷き詰められ石仏が一つ。訪問した時は花期にはまだ早いためかほとんど花がない状態でしたが、花の盛りには、椿の花が花姿を保ち、あるいは花びらを散らして苔の上に落ち広がる様はきっと美しいことでしょう。花が見られなかったので絵はがきを買いました。
境内には白毫寺と名を付けられた樹齢500年というヤブツバキも見られます。命名者は渡邊武氏。ヤブだが紅に白い斑が点々入ることから、白班を仏の白毫に見立てたといいます。
他にも境内には他にも園芸品種もいくつか植えられていました。
高円山一帯は万葉時代から萩の名所であったといい、もとは天智天皇の皇子、志貴皇子の山荘跡に建てられたと伝えられています。ここから春日山までは古代の道である山の辺の道を歩いてゆけます。山の辺の道の起点は椿市(つばいち)、椿に縁のある場所だったことを思い出します。今では住宅地や畑の中を通る古道を歩きながら、古代の人々はどのような気持ちでこのあたりを行き交っていたのだろうと思いました 。
<訪問日:2017/3/26>
データベース
【名称】白毫寺五色椿(びやくごうじごしきつばき)
【木のサイズ・形状】樹高:約5m、根元周囲:100cm、樹形:根元から80cmのところで幹が二分している。その分岐部の直下の周囲は120cm、枝幹の基部の周囲は東方60cm、西方80cm。
【樹齢】推定約450年
【花、葉】花形:八重咲、花径:中輪、花色:紅色、白、桃色、縦絞などの花を咲き分ける、一重、唐子も混じる。葉:楕円、中形、有尾頭、鈍脚、平坦、細鋸葉、濃緑色
【花期】3月下旬~4月上旬(ヤブツバキ3月~4月)
【所在】奈良県奈良市白毫寺町392
【備考】問合せ:TEL:0742-26-3392
・奈良県天然記念物指定1957年(S32)
アクセス
- JR関西本線(大和路線)奈良駅からバス10分高畑町下車徒歩20分。
- 新薬師寺より徒歩約15分
参考資料
- 高円山白毫寺パンフレット.白毫寺
- 最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会,成文堂新光社,2010
- 境内案内板(奈良県教育委員会設置)