「奈良の三銘椿」の一つ白毫寺五色椿。花は紅、白、桃色、絞りなどに割き分けます。8年ぶりに訪ねてみました。一時期樹勢が弱っていたものの手当てをして延命し、今年も花を咲かせていました。
白毫寺とその付近
高円山白毫寺(こうえんざんびゃくごうじ)は奈良の若草山から南に春日山に続く高円山(たかまどやま)の麓の高台に位置しています。百段余りの石段を登りつめた境内からは、奈良を取り巻く山並みや丘陵、奈良市街が一望できて素晴らしい眺めが広がります。
高円山一帯は万葉時代から萩の名所であったといい、もとは天智天皇の皇子、志貴皇子の山荘跡に建てられたと伝えられています。ここから春日山までは古代の道である山の辺の道を歩いてゆけます。山の辺の道の起点は椿市(つばいち)、椿に縁のある場所だったことを思い出します。今では住宅地や畑の中を通る古道を歩きながら、古代の人々はどのような気持ちでこのあたりを行き交っていたのだろうと思いました 。
白毫寺五色椿の由来
白毫寺の五色椿は、東大寺開山堂の糊こぼし、伝香寺の散り椿と並ぶ奈良三名椿の一つです。花色は紅色、白、桃色、縦絞などを咲き分け、咲き方も八重、一重、唐子が入り混じるという多彩さ。別名の奈良七福神は、こうした花のバリエーションの豊かさから来るのでしょうか。品種名は白毫寺五色。この木が原木だといいます。
境内の案内板によると寛永年間(1624~1645)に興福寺塔頭、喜多院から移植したもので、パンフレットによると樹齢およそ450年という古木。パンフレットの制作時期から時間が経っていることを考えると、その後も樹齢を伸ばしているはず。県指定の天然記念物です。
2017年3月に訪問したときは根元には苔が敷き詰められ石仏が一つ。訪問した時は花期にはまだ早いためかほとんど花がない状態でしたが、花の盛りには、椿の花が花姿を保ち、あるいは花びらを散らして苔の上に落ち広がる様はきっと美しいことでしょう。花が見られなかったので絵はがきを買いました。
2025年に3月半ばに再度訪問。地元の樹木医でもある椿友は、花はまだほとんど咲いていないが今年は蕾が多いと聞きました。長い時間をかけて樹勢は少しづつしているのでしょうか。
<2025年3月>

- 白毫寺五色椿20250318
- 白毫寺五色椿20250318

<2017年3月>
- 白毫寺五色椿20170326
- 白毫寺五色椿20170326
- 白毫寺五色椿20170326
白毫椿
境内には白毫寺と名を付けられた樹齢500年というヤブツバキも見られます。命名者は渡邊武氏。ヤブだが紅に白い斑が点々入ることから、白班を仏の白毫に見立てたといいます。
境内の椿風景
境内には石仏や建物に混じって園芸品種もいくつか植えられており、椿のある景色を楽しめます。
<訪問日:2017/3/26 雨、2025/3/18(火)晴れ>
アクセス
- JR関西本線(大和路線)奈良駅からバス10分高畑町下車徒歩20分。
- 新薬師寺より徒歩約15分
参考資料
- 高円山白毫寺パンフレット.白毫寺
- 最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会,成文堂新光社,2010
- 境内案内板(奈良県教育委員会設置)