秩父神社の川瀬祭を見に行く折に、秩父三社を巡りました。三峯神社、秩父神社、宝登山神社の三社はいずれも由緒ある立派な神社です。いすれの宮も華麗で重厚な趣の木彫を施していて、近年の塗り替えによりその彫刻の美しさが際立っています。飽きずに眺めていると、秩父神社本殿と三峯神社随神門の装飾に、椿のモチーフを見つけました。
秩父神社(ちちぶじんじゃ)
関東屈指の古社の一つとされる秩父神社の創建は、平安初期の文献によれば崇神天皇より知知夫国(ちちぶこく)初代国造に任命された八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)の子孫・知知夫彦命が、祖神をお祀りしたことに始まるとされ、武蔵国成立以前より栄えた知知夫国の総鎮守として現在に至ります。鎌倉時代に秩父平氏が奉じる妙見信仰と習合し、昭和時代に秩父宮雍仁親王を合祀し、四柱をお祭りする神社です。
秩父神社といえば毎年12月3日に行われる秩父夜祭が有名で、京都の祇園祭、飛騨高山祭と共に日本三大曳山祭に数えられます。秩父夜祭は国指定重要無形民俗文化財、同重要有形民俗文化財、ユネスコ世界無形文化遺産(全国33件の祭からなる「山・鉾・屋台行事」の1つ)に登録されています。
本殿の木彫の椿
現存する社殿は、天正20年(1592年)に徳川家康が寄進したもので、江戸時代初期の建築様式をよく留めていることなどから埼玉県の有形文化財に指定されています。
2014年に創建2100年を迎えるにあたり奉祝事業として本殿の彫刻の塗り直しを主とした改修工事が約5年間かけて行われ、現在は華麗な彫刻が美しい色彩によって見ることができます。
本殿には左甚五郎作「つなぎの龍」「子宝子育ての虎」「お元気三猿」をはじめ、様々な彫刻が施されて、賑々しく飾り立てています。
本殿北側の中央に彫刻された「北辰の梟」は、体を本殿に向け頭は背中側の真北に向けてご祭神をお守りしています。ご祭神の一柱である妙見様は北斗七星を神座とする妙見菩薩なので、妙見様の方角を向くこの梟は特に縁が深い瑞鳥であり、神社のシンボル的存在です。
その梟の左並びの飾りに椿の彫刻を発見。
三峯神社(みつみねじんじゃ)
神社縁起によると景行天皇の命により東国平定に訪れた日本武尊(やまとたけるのみこと)が、この地の美しさを目にして、国生みの二柱、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉册尊(いざなみのみこと)をお祀りしたのが始まりと伝わるので、1900年以上前の造営とされます。狼が神使として祀られるのは、この時に尊を道案内したのが狼(山犬)であったとされるからです。その後、妙法が岳、白岩山、雲取山の三山が連なる様子から景行天皇が三峰山と総称し「三峯の宮」と名付けられます。
役小角(えんのおづぬ)が伊豆から三峯山に往来して修行したと伝わり、この頃から修験道が始まったとされ、以後仏教色を強めて行きます。空海が観音像を安置し、中世以降は日光系の修験道場となり、関東各地の武将の崇敬を受けました。
随神門の木彫の椿
現在の随神門(随身門)は寛政4年(1792)に再建された仁王門が明治時代の神仏分離令により仁王像を撤去して随神門となったもの。石畳の上に聳え立つ門は高さ12m以上、華麗な装飾を施されています。埼玉県指定有形文化財。
2002年に神社創建1900年および月観道満の入山500年を記念して、本殿、拝殿、随神門の漆塗替えが行われたため、装飾の彫刻も色鮮やかに甦っています。その中に、椿と思しき彫刻も見ることができました。
<訪問日:2024年7月19日 晴天>
データベース
【名称】秩父神社(ちちぶじんじゃ)
【所在】〒368-0041埼玉県秩父市番場町1-3
【備考】
・問合せ:電話:0494-22-0262
【公式サイト】秩父神社公式サイト:https://www.chichibu-jinja.or.jp/
【名称】三峯神社(みつみねじんじゃ)
【所在】〒369-1902 埼玉県秩父市三峰298-1
【備考】
・問合せ:TEL: 0494-55-0241(9:00~16:00)
【公式サイト】三峯神社公式サイト:https://www.mitsuminejinja.or.jp/
アクセス
秩父神社
- 秩父鉄道秩父駅より徒歩3分
- 西武秩父線西武秩父駅より徒歩15分
- 自動車の場合、関越自動車道花園I.C.で降り国道140号線を秩父・三峰方面へ、約30k。
三峯神社
- 西武秩父駅よりバス、三峯神社行きで約75分。
参考文献
・秩父神社公式サイト:https://www.chichibu-jinja.or.jp/
・三峯神社公式サイト:https://www.mitsuminejinja.or.jp/saijin/
・三峯神社随身門の建築と大工について-三峯神社社殿の研究2-,大木研汰,芝浦工業大学工学部建築工学科2017年度卒業論文,https://www.arch.shibaura-it.ac.jp/multidatabases/multidatabase_contents/download/871/f0b036f64ef92e1fdd0010c84c50095a/66?col_no=2&frame_id=795
・観光庁 地域観光資源の多言語解説文データベース 三峯神社(国立公園内) 三峯神社の歴史・由来:https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R1-01215.html