【椿の名所】福江の大ツバキ

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椿の島として東の伊豆諸島と並び称される西の長崎県五島列島。その中で最大の面積と人口の福江島を代表する椿の巨樹が、「福江の大ツバキ」または「大笮(おおさく)の大ツバキ」です。大笮(おおさく)はこの辺りの地区名です。

椿の島として知られる福江島、この福江の大ツバキは五島市の野々切町大窄の個人宅の庭先にあります。大窄地区は福江島の南東部に位置しており、集落の開拓時に防風林(屋敷林)として椿を植えたものが残って大木となりました。

福江の大ツバキは1967年(昭和42年)に県指定天然記念物になりました。

五島市野々切町大窄(おおさく)の個人宅の庭先にあるツバキである。防風と採種のために植えられたもので、指定当時には4本並んでいたが現在は2本が残っている。高さは東側の木が10.5m、西側の木が8.6mで樹齢は300年ないし370年という。ツバキの巨樹として価値がある。

長崎県公式サイト 長崎の文化財 福江の大ツバキより

五島市観光協会のサイトによると、樹齢350年から400年のこの大椿も度重なる台風の被害で樹形の変化・倒木などにあい、指定時に4本あった木が2本だけになりました。現在は残された2本が県指定天然記念物「福江島の大ツバキ」として保護されています。

以下、案内板の記載内容です。

県指定天然記念物 福江の大ツバキ

ツバキは常緑で潮風等にも強いことから、耕作地や住居に防風林として植えられてきた。ここ大笮地区でも、開墾の際に、防風林やツバキ油の原料となる実(カタシ)を採るためよく植えられており、現在でも民家脇に数多く見られる。なかでもこの大ツバキは樹齢が数百年をこえるといわれている。

指定当時は4本並列していたが、そのうちの1本が枯れ、3本になった。その後、中央の大ツバキは昭和六十二年の台風で大枝が折れ、蘇生処置を施すことで生育していた。平成17年の台風により根元から完全に折れて、2本となってしまった。

現存する2本は東側のツバキが、幹周り1.95m、樹高10.50m、西側のツバキは、幹周り1.80m、樹高8.60mである。

指定 昭和42年2月20日認定

長崎県教育委員会
福江師教育委員会

平成18年3月31日

福江の大ツバキ 案内板より

私が訪問したのは2017年6月だったので、2本になった姿しか知りません。なんとか在りし日の様子を知りたいと思い調べてみると、過去の記録に行き当たりました。

3本残存していた頃の記録

3本だった頃の記録として、2000年10月27日の、「第13回巨木を語ろう全国フォーラム記録集」の記載があります。

天然記念物 福江の大ツバキ

五島には椿の自生がおおく久賀島を中心に各地で見られる。しかし大木はまれでこの指定のものは高さがいずれも14m、幹回りが西側のもので1.85m、中央が最大で2.35m、東側が1.80mである。

鑑定当時は4本並列していたが、そのうちの1本が枯れ、昭和六十二年の台風で、中央のツバキの片方の大枝が折れてしまった。

ツバキは常緑で潮風等にも強いことから、耕作地や住居に防風林として植林され、この大ツバキも大笮(おおさく)地区の開墾の際、風よけと採種のため植林され、樹齢は350年を超えているものと思われる。

昭和四十二年二月二十日認定

長崎県教育委員会
福江師教育委員会

第13回巨木を語ろう全国フォーラム記録集(2000/10/27)の記録より

4本残存していた頃の記録

また、4本だった頃の記録としては、元日本ツバキ協会会長出会った桐野秋豊氏が、1970年(昭和45年)2月に福江島を訪問した際の記録として「長崎県五島列島・久賀島のヤブツバキ林」がありました。

それによると、当時は地区名をとって「大笮の大ツバキ」と呼ばれており、当時の案内板には以下のように書かれていたようです。

椿は五島の名産であり、島内各所に生育しているが、天然記念物として指定されたものがない。この椿は三百五十年前に防風林として植えられたもので、その威容は五島椿の代表的なものとして価値をそなえている。昭和三十二年の台風により小枝が折れる程度の被害を受けているが、生育状態は良好で、現在でも防風林としての役目を果し、(中略)巨樹で、しかも四本並列しているのは珍しく貴重なものである。

桐野秋豊長崎県五島列島・久賀島のヤブツバキ林」より

続けて桐野氏はそれぞれの木の幹周りを、手前から幹回り地上1mで①145cm、②153cm、③247cm、④168cm、と記してある。この木の他に3本の椿の巨樹があったが、昭和三十年代に伐採され、その直後に島外から貴重な文化財として保護を要望する声が高まって残されたという、と書いておられます。

300年、400年のという年月に耐え、畑や家を守ってきた大ツバキ。生活と密着していた時代は過ぎてしまったのかもしれません。ですが、今改めて福江島の原風景として注目を浴びていることは喜ばしいことです。

できることならこれから先も大切にされて、実から採った椿油も活用されて、地域の方々の暮らしになくてはならない存在であって欲しいものです。

<訪問日:2017年6月6日曇天>

データベース

【名称】福江の大ツバキ、または大笮(おおさく)の大ツバキ
【大きさ・形状】2本現存
・東側のツバキ:幹周り1.95m、樹高10.50m
・西側のツバキ:幹周り1.80m、樹高8.60m
【樹齢】約300〜370年
【花、葉】一重赤ヤブツバキ
【花期】2月下旬~3月
【所在】五島市野々切町大笮1729
【備考】
・個人宅だが見学可能
・問合せ:五島市観光物産課、TEL:0959-72-6111
・県天然記念物指定1967年(S42年2月20日)
・五島市所有
【公式サイト】五島市情報サイト つばきのしまだより:https://www.city.goto.nagasaki.jp/tsubaki/010/020/20190122213832.html

アクセス

  • 福江港ターミナルから国道338号線で野々切町へ。

参考文献

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