服部緑地都市緑化植物園には、路地植えされた椿の植栽地区である「椿山」と温室内の椿コーナー「カメリアルーム」の2つの椿エリアがあります。
園の東門から入ってまっすぐ進むと正面に管理棟に着きます。そこで入場券を買って右手に向かえば椿山、そのまま建物の階下に降りれば温室内のカメリアルームにゆけます。どちらから行くかはお好みで。
椿山
服部緑地都市緑化植物園の椿山は、開設当初(昭和58年)からありました。日本の椿が約350種と洋種椿が約123種あります。
ここ服部緑地都市植物園は1983年(昭和58年)に第一回全国都市緑化フェアが開催された場所でした。全国都市緑化フェアは、緑がもたらす快適で豊かな暮らしのために都市緑化を進める花と緑の祭典です。毎年、全国各地で開催されていますが、第一回目がここでした。当時の皇太子明仁親王が行啓され、記念植樹された椿の木が椿山にあります。
椿山の入り口には椿についての案内があります。ちょっと古びてますが、初めの方は読んでから散策するとより理解が深まって楽しめるのではないでしょうか。
椿園ができたわけ
今となっては当たり前のようにある椿園ですが、考えれば緑化植物園の一角になぜわざわざ椿だけを集めて植栽した「椿園」を作ったのか、少々不思議なことです。
開園当初、園内には椿が700種も植栽されました。これは当時としてかなりな規模の品種と本数ではないでしょうか。
椿園の誕生には、大阪府池田市の樹楽園、京都府の山口椿園、兵庫県宝塚市の金岡椿樹園といういくつもの園芸業者が関わっていたとのことです。また園内には椿の園芸品種131本を寄贈したことを記した記念碑がありました。
園内でボランティアをされている方に伺うと、近隣に先に述べたような園芸業がたくさんあったことを教えられました。つまりそれだけ椿の園芸が盛んで需要があったということです。椿は人気があり身近な園芸植物でした。
そしてそれは大阪や近畿地方にとどまらず、日本の各地においても言えます。江戸時代に爆発的なブームとなった椿は、園芸にとどまらず絵画のモチーフや図録のモチーフ、茶の湯などの文化においても重要な役割を担いました。椿の園芸が広まり始めて500年余り、椿は日本各地で日本人の生活文化に浸透してきました。その出発点であり中心地の一つは京都や大阪であったでしょうから、優れた園芸業者が植物園の目玉として納品できるほど多様な椿の品種のコレクションを保有していたとしてもうなづけるところです。
日本において椿が人々に好まれ身近な園芸植物であったこと、近隣に豊かな椿の園芸資源が存在したこと、そのことを思い合わせると都市緑化促進をうたって設立された第1号であるここ服部緑地都市緑地植物園に、椿が選ばれてシンボル的な椿山できたのは自然と納得できます。
温室・カメリアルーム
椿の中には冬や新春から咲く種類もありますが、世界的にツバキ属の植生分布を見るとベトナムや中国南部など暖かな地方に広く分布しています。日本はむしろツバキ属の北限地です。当然、寒さに弱い仲間もいて、そんな椿たちの為にあるのがこの温室の「カメリアルーム」です。20種以上のツバキ属が育てられています。
中国南部の金花茶やベトナムのハイドゥン(Camellia amplexicaulis)など、寒さに弱い椿の仲間が大切に育てられています。
また、雨風から守られるため、咲いた花が長く美しい状態で楽しめることも温室の良いところです。服部緑地植物園のカメリアルームには、日本から海を渡った品種や中国の椿と掛け合わせて欧米で品種改良され洋種椿がコレクションされています。
温室内には椿外にも様々な植物が展示されています。特にサボテンなどの多肉植物はとても立派です。数十年を経て立派に育ったサボテンは見応えがあります。
椿の開花時期カレンダー
現在、椿山とカメリアルームには約500種のツバキ属の品種があります。その一部の花がいつ咲くのか一覧表でカメリアルームの入り口に貼られています。なかなか親切な工夫だと思います。
椿の水彩画展
服部緑地植物園ではたくさんのイベントが行われています。2019年年2月1日の訪問時には、管理棟のギャラリーで田辺津紀江さんによる水彩画展「椿に魅せられて」が開催中でした。田辺さんはこの植物園によく絵を描きにいらっしゃる方だそうです。
椿はどれも自然体の柔らかな線と色合いで、いつまでも見ていたいような優しく美しい絵でした。
こうしたイベントは植物園だけでなく多くのボランティアに支えれているようです。椿に関してはボランティアグループ「この指たかれ」が園と連携して椿の観察会の実施や園内の名札付け、開園当初から失われた品種の椿の復活を目指して育てているとのことです。とても活発な活動で驚くほどです。
服部緑地植物園の景色
広さ約6ヘクタールの植物園は大きな池やその周りに植えられた植物によってのんびりとした空間が広がります。ちょうどボランティアガイドの方がいらしゃって、園を案内をしていただきました。
大きなラクウショウ、始めて見る寒アヤメは可憐な姿でした。甘い香りを放つ蠟梅の花、その蜜を目指してやってくる鳥。夏には子供達が池であそび、池の魚を狙ってカワセミが舞い降りるそうです。
まさに都市の中の緑地帯は人々のオアシスです。行政は昨今の財政難によって維持管理に困難があるでしょうが、市民にとって大切な場所として守り続けて欲しいものです。
データベース
【名称】服部緑地都市緑化植物園
【花期】12月〜4月
【所在】〒561-0872 大阪府豊中市寺内1-13-2
【備考】
・開園時間:午前10時~午後5時(入園は午後4時まで)
・休園日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
・入場料:大人(高校生以上)210円、中学生以下無 料
・問合先:TEL.06-6866-3621
・公式サイト:http://hattori.osaka-park.or.jp/guide/facility/botanical/
アクセス
・北大阪急行(御堂筋線直通)「緑地公園」下車徒歩10分
参考
- 服部緑地都市緑化植物園公式サイト
- Japan Camellia 110号,日本ツバキ協会,2018年8月9日