船長が作った世界の植物の庭園
ヴィラ・ターラントは16ヘクタールもの広い植物園です。この庭園を作ったのは、ニール・マクイーチャン船長(Captain Neil McEacharn)で、ターラントの名称は彼の祖先であるターラント公爵に因んでいます。
彼は1930年にこの土地を購入すると、「世界中の貴重な植物を豊富に集めた植物園を作る」という計画を立てて、世界中を旅して種子や植物を集めて回りました。元から自生していたクリの木のうち樹齢の古い木をいくつか残し、針葉樹やマグノリア、古い品種のツバキなどが植えてゆきます。
彼は庭園をイタリア政府に寄付し、公園事業は引き継がれて、現在は一般に公開されています。
この広い公園をできる限り散策してまわりました。「Gardens」とある通り庭はいくつものエリアに分かれていてそれぞれの特徴や様相を示した庭園になっているからです。特に価値のある品種だけで2万種あるといいます。
高く仕立てられた椿
入り口からまっすぐ奥へと伸びる園路の左右は花壇や濃い緑の針葉樹などの背の高い木が続き、奥へと誘われてゆきます。日本のスギもありました。左手は斜面で、並行して走る通路と木々が緩やかに植えられているのが見えます。噴水を通り過ぎ、ダリアやチューリップの間を抜けて広々として明るいエリアに出ると椿がたくさん見えてきました。
驚くのは木の高さと形です。7〜8m、10m近くまで育った木が丸く刈り込まれています。日本ではお目にかかった事のない光景ですが、葉の濃い緑と、よく咲いた花の赤や白、明るい桃色のコントラストが綺麗です。
生垣のように椿が並ぶエリアはゆったり植えられたツバキがのびのびと枝を広げていています。惜しむらくは品種名版がほとんどついていない事でしょうが、おおらかな庭園を散策して椿の花を楽しむことに比べれば些細なことに感じます。
ツバキはマッジョレー湖の典型的植物として位置付けられて、9種と2つの種間雑種の品種が450品種あるようです。10月から4月下旬まで開花し続けるそうです。中でも貴重な品種としてチャ(Camellia sinensis)を挙げているあたりが飲茶の習慣が重要なヨーロッパならではかな、と思います。観賞用のCamellia属としてC.japonica、C.reticulata、C.malifloraなどが挙げられていました。
ここで見ることのできたツバキ
<2023年3月>
マグノリアの海
ツバキも綺麗でしたが、印象的だったのは、ちょうど花の盛りを迎えたモクレンやコブシの花々のエリアです。広い場所にゆったりと植えられたこれらの木々は、四方に向かって枝をのびのびと広げ、まるで燭台の上のキャンドルのように花をつけていました。自重ためなのか、やや枝垂れた枝の先まで咲いた花をすぐ目の前で見ることができるので、普段は自分の目線より高い位置で咲くモクレンやコブシの花を見慣れていた私には驚きです。まるでの夢のように美しく開放的なマグノリアの海をたゆたっているような気分でした。
地形を巧みに生かした起伏に富んだ園内は場所ごとで魅力的に表情を変え、高い台に登ると遠くアルプスの山並が望めて最高の景色でした。
訪問:2023年3月28日(火)晴れ
参考:
- Botanic Gardens of Villa Taranto(公式パンフレット)
- I C S大会イタリア会議公式案内(A guide to the ICS 2023 Congress):https://internationalcamellia.org/public/downloads/nLfKj/Splendor%20of%20Italian%20Camellias.pdf