ボッロメオ家の石の島を彩る椿の庭
ICSイタリア大会初日の午後は、マッジョーレ湖に浮かぶマードレ島にホテル前の桟橋から船で渡りました。イタリアの旧家ボッロメオ家が所有するというマードレ島は、長さ330m、幅220m、高さ40m、面積8万平方メートル。島全体がいくつもの庭園が合わさってできた植物園で、庭と16世紀に建てられたボッロメオ家の屋敷を見学ができました。
島中が植物で覆われたマードレ島。上陸して湖に沿った園路を島の北東側から回ってゆくと、石造の階段と竹林、そして椿が見えてきました。
樹齢200年の古木椿
そのまま壁に沿ってツバキが植えられたツバキを見ながら進むと、湖に向かってひらけた「ツバキの広場(Piano delle Camelie)」に出ました。石塀を植物が覆うように仕立てられていて、ツバキも混じっています。中に一重の赤いツバキの花が咲いているのを見つけました。壁に這わせるようにツバキを仕立てるやり方は日本では見ませんが、フランスでも見ました。無味乾燥な高い石塀や建物壁が常緑のツバキで覆われると、潤いのある雰囲気になります。
この辺りは島でも古い植物がある区画らしく、広場の奥には樹齢200年と言われる椿の古木がありました。花は赤い八重で、たくさんの花を咲かせていました。
ツバキやチャなどの背の高い生垣
そのほかにも島内の至る所にツバキやチャ、その他の植物による生垣がありました。これらも日本の常識から考えられないように密で背が高く仕立てられています。椿の高生垣といえば銀閣寺(東山慈照寺)が思い起こされますが、マードレ島の生垣は規模もサイズもかなり大きく、かつ島中で見られます。生垣に求めるサイズ感がずっと大きいのは、土地が広いからか、建物とのバランスによるのでしょうか。
緩やかな白い石階段がマッジョレー湖へと伸びており、その道筋の左右に背の高い緑の塀がそそり立ちっています。緑の生垣をこえて青い湖面が見える光景はなんとも美しいものでした。
貴族の庭を彩る多様なツバキ
もちろん普通の庭園木としても椿は植えられています。緑の芝生が広がる庭に咲いた椿は咲き終えた花を樹下に落として、桃色や赤色の椿の花を雪のように積み重ねています。その花園の上を悠々と孔雀や白孔雀、雉が華やかな羽を揺らしながら悠々と歩く様子は楽園のように美しく、幻想的ですらありました。
I C S大会案内によると、マードレ島には150以上の原種と園芸品種のツバキ、camellia属の近縁種があり、ジャポニカ種で作られた18世紀の古い品種の「Gloria delle Isole Borromee(ボロメオ諸島の栄光)」は今でも島にあるそうです。
島中が植物で覆われている感の強いマードレ島ですが、古い絵を見るとかつては石の城壁が段々に連なる様相で緑は今のように多くありません。19世紀のヴィタリアーノ9世は植物学に熱心で世界中から植物を集めたとのことなので、今の姿はその頃から長い年月をかけて作られたものなのでしょう。
邸宅の中で椿を見つける
邸宅はボッロメオ家の家具調度品や絵画などが展示してあります。人形劇が好きだったようで、専用の舞台が設置された部屋がありました。華やかな七宝焼の皿に描かれた花々の中に白い椿が、豪奢なシャンデリアにも椿のモチーフを見つけることできました。
ここで見ることのできたツバキ
<2023年3月>
訪問:2023年3月26日(日)晴れ
参考
- I C S大会イタリア会議公式案内(A guide to the ICS 2023 Congress):https://internationalcamellia.org/public/downloads/nLfKj/Splendor%20of%20Italian%20Camellias.pdf