東出雲の金正寺五色八重散椿は日本ツバキ協会優秀古木ツバキ登録第2号ですが、山中にあるため訪問が難しい場所でした。2024年全国椿サミット松江大会の折、地元の椿愛好家による案内で、上意東地区に点在するいくつもの古木椿と共に巡るという貴重な機会に恵まれました。
上意東地区おちらと村
第34回椿サミット終了後のポストツアーを出雲の椿友、Mさんが組んでくれました。まずは上意東地区の「東出雲おちらと村」で蕎麦料理をいただきます。「おちらと」とは、出雲地方の言葉で「ゆっくりと、のんびりと」という意味。ここは上意東をこよなく愛する方々が人と地域をつなぎ未来を育てる活動拠点としている場所なのだそうです。
到着すると庭に椿愛好家による椿の鉢植えが展示されており、私たちを迎えてくれました。3月中旬頃から4月中旬頃まで100鉢以上展示されるそうです。意宇の里(おうのさと)や本庄伴助などの松江生まれの品種も見られました。
室内には至る所に椿モチーフの手作り飾りが展示してあります。これらはおちらと村を拠点に活動している方々が作成したもので、前日の全国椿サミット松江大会の会場も飾っていました。木彫り、布や折り紙、吊るし飾り、立体の木に手作りの椿の花を貼り付けたものなど、多彩なクラフトが、賑やかに楽しげに室内を飾っていました。
金正寺五色八重散椿
上意東地区は古来より修験道の地であった星上山(星神さん)の麓にあり、奈良時代・聖武天皇の時代(701〜756年)には星上寺が存在し、金正寺はその末寺と思われています。今は廃寺となっていますが手入れはされています。
その境内にある五色八重散椿が2016年に日本ツバキ協会の優秀古木ツバキ第2号として登録されました。由来ははっきりしませんが、修行僧が京より持ち帰ったと考えられています。
地際から数十センチから数本に幹が分かれて空に向かって箒のように枝を広げています。地面から30〜40cmくらいのところには接木の痕のような線が見えました。残念ながら花を見ることはできませんでした。全体に苔で覆われてウロのようなものも見え葉も落ちています。木はかなり弱っているようでしたが、なんとか回復させようと努力が続けられていました。回復を祈るばかりです。
上意東地区の古木椿の数々
地元の椿愛好家Fさんの案内で上意東地区の古木椿を巡りました。頂いた古木リストには30件近い古木が記されています。そのうちのいくつかに連れて行っていただきました。多くは個人宅の椿で、ヤブツバキ、五色八重散椿、紅唐子、キャプテン・ローなどの名が見えます。品種名はなく唐子咲き椿、紅色八重椿、唐子〜獅子咲きなどと記された椿もあります。
市穂神社の日当たりの良い斜面に立つヤブツバキは、蛸足状にたくさんの枝を複雑に広げた元気なツバキでした。
ある個人宅には水源から張り出すように伸びた2本のヤブツバキが生えていました。これほど水場に近に場所でよく生きているものだと皆感心しました。水場の岩にしっかり根を張り立っていて、まるで泉を守る阿吽像のように頼もしくみえます。
庭の奥で小さな祠を守っている椿、小高い場所にポツンと立つ椿、敷地の際で堂々と立つ椿などが見られました。
老木・古木にヤブツバキだけでなく園芸品種もあるのは、この周辺が古くから都と結ばれて人流物流があった証拠なのだと思います。それがどのようなものであったのかは椿だけが知るのかもしれません。
<訪問日:2024年3月10日 晴天>
データベース
【名称】金正寺五色八重散椿
【大きさ・形状】樹高:10m余、幹周り:約205cm、m、m、cm、枝張り:m
【樹齢】推定450〜500年
【花、葉】花色:白、白地に紅絞り、淡紅色、淡紅色地合い、覆輪花、紅、など多彩。花形:八重咲き、花径:7〜12cm
【花期】3月中旬〜4月中旬
【所在】島根県松江市東出雲町上意東1101番地 乗光寺境内(旧金生寺・廃寺)
【備考】上意東本谷中組集落の所有、見学は自由
アクセス
山陰本線揖屋駅より車10分
参考文献
日本ツバキ協会公式サイト 優秀古木ツバキ 金正寺五色八重散椿:
https://japancamellia.org/kinshouji-goshikiyaechiritsubaki/
NPO法人かみいとう 東出雲おちらと村:https://kamiitou.jp/ochirato