元々花木の苗を育てる畑地として明治時代に開墾された一帯に、長年にわたって育成されてきた園芸品種や自然実生木のツバキを活かして作られた久留米つばき園、そしてその長い園芸の歴史の中でこの地にやってきた世界中の原種や園芸品種の数々のツバキを展示した久留米市世界のつばき館。ツバキの一大生産地であり原種、品種、古木のストックである久留米の歴史を体験できるのが、ツバキの生きた保管庫ともいうべき久留米市世界のつばき館と久留米つばき園なのです。
久留米市世界のつばき館
原種ツバキ、国内外の園芸品種のツバキを広く収集展示し観覧できる久留米市世界のつばき館です。2010年(平成22)に久留米つばき園とともに国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
施設は①原種ツバキを展示するツバキ展示施設(ガラスハウス)、②椿に古木などがある庭園、③事務所を兼ねた情報交流施設の3つからなります。
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ツバキ展示施設(ガラスハウス)
駐車場からよく目立つガラスの建物は、原種ツバキ約100種以上を展示する日本最大の品種数を誇るガラスハウスです。広さは324㎡、世界に250種以上あるという原種ツバキを、地域別に、日本、台湾、中国西南部、中国東南部、ベトナムの5つのゾーンに分けて展示しています。
それぞれの地域ゾーンに展示された原種ツバキは下記の通り。
<日本ゾーン>
ヤブツバキ(関東)、ヤブツバキ(九州)、ヤブツバキ(関東)、ヤブツバキ(東北)、ユキツバキ(新潟)、ユキツバキ(富山)、リンゴツバキ、オキナワサザンカ
<台湾ゾーン>
フルフラケア、タイワンサザンカ、ホウザンツバキ、テリバヒメサザンカ、トリコクラーダ、ウスバヒメツバキ、
<中国西南部ゾーン>
ユンナネンシス、ヤマトウツバキ、サルウィンツバキ、クラシペス、ツァイ、ピタルディ、スーチュアネンシス、ブレビギーナ、フーリエンシス、ロンギカルパ、チャノキ、ユチャ、ギガントカルパ、フルフラケア(中国)、メイオカルパ、ポリオドンタ、ラピデア、リュウシュウキンカチャ、リュウシュウツバキ、オウミャクキンカチャ(中国)、モウズキンカチャ、キンカチャ、チョウチュウキンカチャ、ボウジョウキンカチャ、ショウカキンカチャ、チョクミャクキンカチャ、オオバキンカチャ、フスイキンカチャ、ダイキンカチャ、ロウガンキンカチャ、レモンキンカチャ、アッサムチャ、
<中国東南部ゾーン>
オクトペタラ、グリジシー、キクカチャ、ユーシネンシス、シマサザンカ、オブツシフォリア、マリフローラ、エディタエ、セッコウツバキ、クスピダータ、フラテルナ、ロゼフローラ、アルボギガス、フルバティリス、セミセラータ、アザレアツバキ、グランサムツバキ、ドルピフェラ、クラプネリアーナ、キッシー(香港)、ホンコンツバキ、ユカリツバキ、ヤナギバサザンカ
<ベトナムゾーン>
コンフューサ、キッシー(ネパール)、メガセパラ、ムラウチイ、ドルモヤーナ、ピクエチアーナ、ベトナメンシス、フルフラケア(ベトナム)、ヨクドネンシス、ルブリフローラ、ギルバーティ、ハイドゥン、フラバ、クックフォンエンシス、ペテロッティ、フールンエンシス、ダムダオエンシス、ハコダエ、ファニー、ヒルスタ、タンサエンサ、クエフォンエンシス、キリノイ、ガウダータ(ベトナム)
これらの原種ツバキは地元のツバキ生産者と日本ツバキ協会から寄贈されました。これほど多くの原種が一堂に見られる場所は、ここ「久留米市世界のつばき館」と、「井口カイニョと椿の森公園・いのくち椿館(富山県南砺市)」くらいではないでしょうか。
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庭園
樹齢80年を超えるツバキをはじめ、約40品種160本のツバキを植栽した庭園です。
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情報交流施設
久留米市産や福岡県産の木材を多く使った木造平屋建て、ツバキの資料を展示しています。他にも地域情報の提供、体験交流事業、特産品展示・販売などされています。
久留米つばき園
久留米つばき園は、約3ヘクタールの敷地に約500品種、実生を含む2,000本のツバキ類があるツバキゾーンを始め、ツツジ、シャクナ、モミジ、梅園が区画に分けて植栽された、四季ごとに花を楽しめる場所です。
耳納連山の北麓は江戸時代から植木や苗木の生産が盛んな地域で、久留米の草野は明治時代に花木の苗を育てる畑でした。ツバキのブームの到来によって久留米つばきは生産量も新品種開発も豊富な一大ツバキ産地となりました。
久留米つばき園はこれまで地元の方育成したツバキ品種を中心に植栽し、生産や品種開発の過程でできた自然実生株を活かして、草野校区の有志によって造成されました。樹齢100年に及ぶ白玉宝珠(しらたまほうしゅ)、太郎冠者(たろうかじゃ)、小夜侘助(さよわびすけ)などツバキをはじめ、正義(まさよし)など、数多くの園芸品種や原種ツバキの魅力溢れる場所になりました。
また九州大学農学研究院により収集された日本各地に自生するヤブツバキ、東京農工大学より提供されたツバキ属原種など貴重なコレクションが植栽されています。
開園は2008年(平成20)3月、2年後の2010年(平成22)3月に国際ツバキ協会が国際優秀ツバキ園に認定(Kurume Camellia Garden)され、2020年(令和2)3月には久留米市世界のつばき館を含めた形で再認定されました。
見ることのできたツバキ・サザンカ
11月
<2020/11/8>
椿まつり
毎年ツバキの開花時期に合わせて久留米の椿の祭典ともいうべき「久留米つばきフェア」が開催されます。2010年3月に開催された国際ツバキ会議久留米大会を契機に始まったもので、久留米つばき園、同じく国際優秀ツバキ園の石橋文化センター(Camellia Garden of the Ishibashi Cultural Center)、草野地区が会場です。咲き並ぶツバキの花の鑑賞とともに、即売会、苗木配布、コンサート、ガイドウォークなど数多くのプログラムがあり、マルシェやキッチンカーなども並んで賑やかな市民祭りとなっています。
<訪問日:2020年11月8日 晴天>
データベース
【名称】久留米市世界のつばき館
【コレクション】ツバキ展示施設(ガラスハウス):原種ツバキ約100種以上、庭園:古木を含め約40品種160本
【花期】ツバキ展示施設(ガラスハウス):11月から3月頃、庭園:11月から4月頃
【所在】〒839-0837 福岡県久留米市草野町矢作490番地2
【備考】
・開館時間:9:00〜17:00
・休館日 第3木曜日(祝日の場合は翌日)
・問合せ:久留米市世界のつばき館:TEL 0942-47-1821、E-mail:tsubakikan@ktarn.jp
【公式サイト】https://www.kurume-tsubakikan.jp/
【名称】久留米つばき園
【コレクション】約500品種、2000本
【花期】10月中旬~4月中旬、見頃は12月頃~4月上旬
【所在】〒839-0835 福岡県久留米市草野町草野546−1
【備考】
・開園時間:24時間、入園料無料
・問合せ:久留米市農政部農業の魅力促進課 T E L:0942-30-9165
E-mail(専用フォーム):https://www.city.kurume.fukuoka.jp/cgi-bin/form_mail.cgi?n=085
【公式サイト】https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1090sangyou/2070nourin/3120shisetsu/2013-0220-1704-173.html
アクセス
・JR筑後草野駅より徒歩約20分
・J R久留米駅から西鉄バス「上原行(市役所、西鉄久留米草野、善院、田主丸)」乗車(45 分)、「久留米市世界のつばき館前」下車、目の前
・久留米インターチェンジより車で25分
参考
・久留米市世界のつばき館:https://www.kurume-tsubakikan.jp/
・久留米の観光スポット:https://welcome-kurume.com/spots/detail/a6327c06-da37-41f6-b9f6-25b5254e668
・ほとめきの街 久留米観光サイト,久留米物語 久留米つばきとシーボルト,公益財団法人久留米観光コンベンション国際交流協会:https://welcome-kurume.com/knows/story/kurume_story16.html
・International Camellia Society: https://internationalcamellia.org/en-us/asia-gardens-of-excellence
・最新日本のツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010