【椿の名所】国営武蔵丘陵森林公園のツバキ園

【椿の名所】国営武蔵丘陵森林公園のツバキ園

松林の下に広がるツバキ園

 埼玉県にある国営武蔵丘陵森林公園は、東京ドームの65倍もの広さを誇る日本で初めて作られた国営公園です。その広大な敷地の一角にあるツバキ園、そして公園のバックヤードとも言える第二苗圃には、ツバキとサザンカが500種もコレクションされている宝庫なのです。

国営武蔵丘陵森林公園ツバキ園地図
国営武蔵丘陵森林公園椿園の場所地図(オフィシャルサイトより引用)
武蔵丘陵森林公園ツバキ園案内板

 武蔵丘陵森林公園のツバキ園は、公園の南口から入って15分ほど歩いた広い松林の下に広がっています。松の木々は背が高く、地面を枯れた松葉や他の木の枯葉が覆っており、歩くとふかふかして、足元で枯葉が立てる乾いた音がします。
 その松林の下に、様々なツバキとサザンカの園芸品種が植えられています。あちらこちらに咲く花を追って木を一つ一つ巡り歩くのは楽しいものです。特に椿友と一緒に、「こっちで七福神がよく咲いてますよ」「ここのツバキ園の根岸紅の紫がかった色は他ではなかなか見られない色だそうですよ」などと話しながら見て回り、写真を撮っているとなおさらです。

武蔵丘陵森林公園ツバキ園
武蔵丘陵森林公園椿園

 背の高い松林の下に広がるツバキ園という立地のために、落葉の時期になると松葉が大量に木の上に落ちて、写真を撮るときには枝や葉にひっかかった松の落ち葉が一緒に写ってしまいます。美しい花の写真を撮りたい方には難点かもしれませんが、私個人的には、それもこの場所ならではの風情を作り出していて良いかと思います。
 それに、松の木が風よけ雨除けになっているせいか、花や葉の痛みがあまりひどくないように見受けられました。
 ツバキ園の南側のふれあい広場側では、紅葉の今の時期、サザンカの花とカエデの紅葉を同時に楽しむことができます。紅葉を背景に見るサザンカの花というのもオツなものです。

武蔵丘陵森林公園の紅葉とサザンカ
紅葉に映えるサザンカの花

 そして今年から、普段は一般公開されていないバックヤード(第2苗圃)の公開が始まりました。自然林の下を歩いて見るツバキ園とちがい、こちらは丈が2~3メートル程度にコンパクトに仕立てられており、花が見やすくなっています。すぐ近くに寄って花を観察したり香りを楽しんだできるため必見です。

武蔵丘陵森林公園特別展示
期間限定公開中のバックヤード入口

 公園のパンフレットには椿の開花は「12月~4月」と記載されていますが、実際には秋のサザンカから、早咲きツバキの品種へと品種が入れ替わりながら、5月頃まで花期長く咲き続きます。もっとも華やかになるのは桜が咲く頃だそうです。

 ツバキとサザンカとの、いくつかの印象的な出会いがありました。
 舞(まい)はちょうど良く花咲いた木があって、花が痛んでいないうちに濃い花色をじっくり見ることができました。ツバキの花越しに空を見るのが好きなので、いくつも並んだ花の向こうに空が見える風景を楽しめたのは重畳でした。

舞 武蔵丘陵森林公園

 月の暈(つきのかさ)は初めて実物を見ました。花弁の底の方がほんのり紅に色づく底紅というタイプの花です。底紅の花はそんなに多くないのでなかなか感動的です。惜しことに虫に食われていたので、次回はもっと綺麗な状態で見られると嬉しいのですが・・・

月の暈 武蔵丘陵森林公園
月の暈(つきのかさ)

 古金襴(こきんらん)というサザンカは同行していた椿友がとても好きな花だと教えられました。絞りの入ったサザンカを見たのは初めてなので衝撃的でした。古風で華やかな感じのする美しい花です。同じ名前の品種がツバキにもあるようで、ややこしいことです。

古金襴(サザンカ)蔵丘陵森林公園
古金襴(サザンカ)

 今年はまだ見頃の紅妙蓮寺(べにみょうれんじ)を見ていなかったところ、たわわに咲いた木に出会えました。花をよく見ると斑入りでした。白斑の入った紅妙蓮寺というのも初見です。

 そして根岸紅(ねぎしこう)というサザンカ。やや紫がかった花色で、記事のトップを飾っている花です。著名なサザンカの研究家の方が視察にいらして、ここの根岸紅の紫の色は他の場所ではなかなか見られない、良い紫の色合いが出ている、とおっしゃったとか。私の写真ではうまく花色が出ていないので、来られる方にはぜひ実物を見ていただきたいものです。

根岸紅 サザンカ 武蔵丘陵森林公園
根岸紅(ねぎしこう)

 

咲いていたツバキとサザンカ

<3月>

<11月>

<2017/11/19撮影>主にサザンカが見られました。

根岸紅(サザンカ)武蔵丘陵森林公園
根岸紅(サザンカ)武蔵丘陵森林公園20171119_3

椿園の今昔

 見ながら木の状態を見たり、名札のチェックもしました。ほとんどの木で一つ一つ丁寧な名前板をつけられており、学習に役立つようになっていました。しかし多くの植物公園でありがちなことですが、残念ながら一部は間違っているものもあります。それは、この椿園が一時期、ほとんど手入れされることがなく、荒廃してしまったことにも依るのかもしれません。放置された植物園は草が生い茂って木を弱めたり、虫が多く発生し花を食ったり病気になったりもします。
 同行した一人が少しだけそのことを話してくれました。それを数年かけて、職員と日本ツバキ協会の方々が、土地と木の手入れをし、名札を付け直したりして、少しずつ今のような状態に復活してきたのだそうです。
 途中で30年ぶりにやってきたというご夫婦にお会いしました。30年前に来た時、木は小さくて植えたばかりという印象だったのが、ずいぶん大きく立派になったと感心されていました。公園と椿を愛する人々の努力がこうした来場者を喜ばせることにつながっているのだなと気持ちが温かくなりました。

紅葉のカエデ園

サザンカを見に行った2021年11月、紅葉に最盛期でした。最も見応えのあるのが、カエデの様々な品種が植えられたカエデ園。燃え立つような紅、橙、黄色みを帯びたオレンジ色、黄緑のままの葉、紫を帯びた暗赤色・・・錦という言葉がふさわしい絢爛たる紅葉でした。重なり合い枝葉を広げるカエデの木々。上の木の幹が下に広がる木の枝葉に落ちて影となる様は不思議な風情があります。

紅葉は園内の各所でも見られます。冬支度の前のひとときの美しい姿を楽しむことができました。

 
データベース:
【名称】国営武蔵丘陵森林公園
【コレクション】希少な古典江戸椿をはじめとする、500品種以上。椿園と植物園の苗圃(期間限定公開)の2か所で観賞できる。数十年クラスの園芸品種が主。
【花期】11月〜4月
【所在】〒355-0802 埼玉県比企郡滑川町山田1920
【アクセス】
東武東上線、森林公園駅北口からバス、もしくはタクシー。
 バス:
 ・森林公園南口行(土日祝のみ運行)終点で下車。
 ・熊谷駅南口行または立正大学行、滑川中学校で下車。徒歩約5分で公園南口到着。
JR高崎線、熊谷駅南口からバス。
 ・森林公園駅行、森林公園南口入口で下車、すぐ公園南口到着
関越自動車道「東松山」I.C.から熊谷方面へ約10分
【備考】問い合わせ:管理センター:0493-57-2111
オフィシャルサイト:http://www.shinrinkoen.jp/
施設説明:明治百年記念事業の一環として、埼玉県比企郡滑川町と熊谷市楊井にまたがる304haの広大な丘陵地に整備された、全国で初めての国営公園。雑木林を中心に、池沼、湿地、草地など多様な環境を有しており、貴重な動植物が生育、生息する場所となっている。首都圏において自然を身近に感じ、親しめる場所。

<訪問日:2017年11月20日(日)晴れ>

参考文献

  • 公式ガイドマップ,国営武蔵丘陵森林公園
  • オフシャルサイト,国営武蔵丘陵森林公園

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