【椿の名所】都立大島公園椿園

【椿の名所】都立大島公園椿園

東京都の伊豆大島にある都立大島公園は自然の地形を生かして整備された公園で、広さは約327ヘクタールもあります。その内の約7ヘクタールが椿園地区で、他につばきの広場と椿資料館があります。

国内最規模の椿園

都立大島公園は植物園と動物園を併設した公園で、島内を一周する東京都道208号大島循環線沿いに植物園と動物園の敷地が向かい合うようにあります。車やバスで簡単に行くことができ、おまけに無料なので、のんびり休日を過ごすにはもってこいの場所です。子供の頃から大島に行くたびに何度も足を運びました。施設は補修改築されて変わってきましたが、開放的でどこか南国めいた懐かしさを感じる風景は今も変わりません。
バス停(あるいは駐車場)で降り、毎年の椿祭りの会場の一つにもなる広場「椿プラザ」の向こうに椿園御正門があります。

大島公園椿園 椿園入口 20180409

椿園内に展示されるのはツバキ科ツバキ属(Camellia)の原種と園芸種が約1,000品種、3,200本の、自生するヤブツバキ約5,000本、国内最大規模の椿の植物園です。
椿園は、1940年頃(昭和15年頃)、埼玉県安行から入れた椿の苗のうち約100品種を1957年(昭和32年)頃から植栽整備を始めました。
この当時、植栽された椿は関東系の園芸品種が多く、特に大虹や明石潟などの大型の花が多かったようです。
その後も公園整備は続き、今では9つのテーマに分けて区画を作って植栽展示しています。

入ってすぐ左に太郎冠者が植えられていて、独特の青みを帯びたピンク色の花で出迎えてくれます。

9つのゾーンのそれぞれの椿

椿を9つのテーマによってそれぞれの区画に集めています。 テーマの設定は植物分類的ではなく、見た目で特徴が分かるようになっていて、独特です。そのため個性的な椿園のレイアウトになっています。
9つのテーマは、以下の通りです。
1.原種展示ゾーン
2.茶花展示ゾーン
3.花色別ゾーン
4.外国産品種ゾーン
5.変枝葉展示ゾーン
6.トウツバキ展示ゾーン
7.産地別ゾーン
8.サザンカゾーン
9.開花期別ゾーン

原種展示ゾーン

椿園正門を入ってすぐ右手にあります。Camellia属の原種は約250種知られており東アジア、東南アジアに分布します。北は日本の青森県を北限に、南は中国揚子江以南からインドシナ半島、西はネパール、ブータンに自生します。ここには原種の中でも比較的寒い地方に見られるものが集められています。

茶花展示ゾーン

茶会などで使われる、侘助や侘芯の椿が集めてあります。11月頃から見られます。

花色別ゾーン

椿の花色は、赤、白、桃、黄があり、さらに赤が色濃くなることで紫色、黒色などに見える椿があります。こうした花色別に分類展示しているゾーンです。

外国産品種ゾーン

椿は江戸時代に日本からヨーロッパへ渡たり、冬の花の少ない時期に美しく咲くことから広まり、品種改良が進みました。欧米では大きく華やかな花が好まれることから、大輪や極大輪、八重咲や千重咲きの品種が多く作られてゆきました。
ヤブツバキ(Camellia japonica)とトウツバキ(Camellia reticulata)の交配種なども展示しています。このゾーンは1月頃からが見頃です。

トウツバキ展示ゾーン

中国原産のトウツバキ(Camellia reticulata)の園芸品種を集めています。

変枝葉展示ゾーン

葉に斑模様が入ったり、形が金魚のようだったり、枝が細くうねるものなどがあります。変化に富んだ 葉や枝の椿を集めています。

産地別展示ゾーン

育種に力を入れていた地域、主な産地などで椿を集めています。

サザンカゾーン

サザンカ( Camellia sasanqua )の園芸品種を集めています。

開花期別ゾーン

椿の園芸品種はそれぞれ開花する時期が少しづつ違います。このため早いものは9月くらいから、遅いものは5月頃まで、長く花を楽しむことができるのです。展示温室の山側に一番早く咲く品種が植えられ、反時計回りに極遅咲きのものまで植栽されています。

その他の路地植えのツバキ

温室

南方に自生する原種の椿や園芸品種がある場所です。 椿祭りの期間中のみ公開です 。黄色い椿として有名なキンカチャ(Camellia chrysantha)、ベトナムのお正月を飾る赤くぽってりした花のハイドゥン(Camellia amplexicalis)、白鳩ツバキというかわいらしい日本名をつけられたフラテルナ(Camellia fraterna)など見られます。
ここで展示される園芸品種は、非公開の培養温室で大切に育てられたもの。見ごろの品種を展示するのでいつでもいちばんいい花が見られます。

大島公園椿園温室
大島公園椿園温室

温室に入るとふわりと良い香りがします。香りを持つ椿が中心に植えられているからです。

雨風から守られて咲く 園芸品種や原種の花はいずれも状態が良く美しい姿です。

つらつら椿の光景

椿園の「開花期別ゾーン」あたりは椿が密生しているので、お昼前にこの辺りを通ると、陽光に照らされた葉が一斉に光を反射してキラキラ輝いて見えます。まるで海のようです。硬いクチクラで守られた椿の葉が広々と連なりきらめく様は、まるで光の海です。椿の葉が艶葉と呼ばれる所以を思い出させます。

この光景を見ると私はいつも「つらつら椿」という言葉を思い出します。

巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を

坂門人足は巨勢山を行きながらそう歌いました。陽光に翻る椿の艶葉を見ると、坂門人足が見たのはこんな光景だったのではないだろうかと思いのです。
この光景を見たくて、大島公園椿園に行くこともあります。

つばきの広場

椿園と都道を挟んだ反対側には、ヤブツバキやトウツバキを国外で品種改良した品種を主体に、大輪であでやかな椿を集めて植栽しています。

大島公園椿園 椿の広場
大島公園椿園 椿の広場

椿資料館

公園内には、椿園から都道を渡ったところに隣接する椿資料館があります。
椿資料館は宿泊施設の黒潮小屋を改修して1992年(平成4)に開館しました。2011年(平成23)にリニューアルして今の形になりました。新しくなっても、私がかつて子供の頃に見た黒潮小屋の材料を活かすように作られていて面影が残っています。
椿の品種や形状、花の色の違い、椿油の作り方などが分かり易く解説されています。また園内の椿で作られたドライフラワー、古い地層から出土した椿の葉の化石、樹齢の椿、島民と椿に関る民具や工芸品なども展示していて、椿についてのあれこれを実物やビジュアル中心に見ることができます。
1月末から3月下旬の椿まつり期間中は切花を、それ以外の季節にはドライフラワーを展示していて、一年中椿の花を楽しめる展示を行っています。

椿まつり最中は、切り花と鉢植えが展示さてています。

旧椿資料館

データベース

【名称】東京都立大島公園椿園
【花期】12月〜3月
【所在】〒100-0103  東京都大島町泉津字福重2
【備考】
・ 問合先:(東京都大島公園事務所) 04992-2-1431
・ オフィシャルサイト: http://www.soumu.metro.tokyo.jp/11osima/park/www/htdocs/parkindex.html
・椿園は終日開園、無休、 椿資料館は8時30分~16時30分 、入園・入館無料
【アクセス】公共交通:東京港竹芝客船ターミナルから東海汽船で大島・元町港→バスで35分。または岡田港→バスで15分。または新中央航空で調布飛行場から大島空港→バスで25分

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参考文献

  • 東京都大島支庁公式サイト:http://www.soumu.metro.tokyo.jp/11osima/park/www/htdocs/gardens/camellia.html
  • 椿の楽園 伊豆大島椿ガイド
  • 海のふるさと村(大島公園)椿園ガイド

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