椿ヶ峰を御神体とする山岳信仰に始まるこの場所は、今では大豊神社として少彦名命、菅原道真、応神天皇の三柱を祀ります。境内には推定樹齢400年という椿の古木「大豊八重神楽」があり、椿ヶ峰に因んで境内や参道に100もの椿が植えられています。訪問した4月初旬は、椿はもちろん枝垂れ桜が満開で息を呑む美しさでした。
大豊神社の御由緒
春ならば桜を見ながら哲学の道を下るうちに大豊神社の参道に着きます。参道を進んで椿ヶ峰を背にした大豊神社へ向かうと参道に植えられた椿の花が出迎えてくれました。
社伝によれば、元は東山三十六峰中十五峰目の如意山椿ヶ峰を御神体として信仰が始まる山岳信仰の聖地でしたが、仁和3年(887)宇多天皇の御脳平癒のために京都御所の真東に位置する椿ヶ峰に少彦名命を奉祀して勅使社として創建されました。宇多天皇の信任が厚かった菅原道真も合祀されています。創建当初は椿ヶ峰天神、次いで大宝明神と呼ばれ流ようになりました。
椿ヶ峰の麓である今の場所に遷座して大豊神社となったのが寛仁年間(1017-1020)、以後は法然院、霊鑑寺、永観堂、南禅寺までの産土神として地域を見守る存在です。
大豊神社の本殿は真後ろに山が迫っていて、境内は椿ヶ峰に抱かれているようです。椿ヶ峰の由来は椿が多かったからと考えられます。
背後の椿ヶ峰から湧き出る御神水は今も手水舎に引かれていて、参拝者を清水で清めてくれます。季節の椿で飾られて麗しい佇まいです。



境内と参道の椿
椿ヶ峰の由来となった椿はもちろん原種のヤブツバキでしょうが、椿に由来する社として参道や境内には数多くの園芸品種の椿が植えられており存在感を示しています。
参道には様々な品種が見られ、鳥居の手前に一際大きな桃色の椿と紅色の椿が、向こう側に桃色の八重椿があります。鳥居を挟んだ椿と鳥居越しに本殿と枝垂れ桜が咲く様は本当に美しい光景です。


境内の品種
境内の椿は100種類以上あるとのことです。公式サイトで紹介されている品種や咲いている花の名札で品種名が確認できました。
不老門、仙人、京錦、綾部、卜伴錦、白侘助、暁、胡蝶侘助、四海波、小平栗、瑞光、袖隠、富嶽の雀、海神(わだつみ)、天目。※表記は名札による。
見ることのできたツバキ
4月
<2025/4/2>
- 富嶽の雀_大豊神社20250402
- 暁_大豊神社20250402
- 四海波_大豊神社20250402
- 天目_大豊神社20250402
- 小平栗_こひらぐり_大豊神社20250402
- 胡蝶侘助_大豊神社20250402
- 瑞光_大豊神社20250402
大豊八重神楽
鳥居を潜ると右手に立つ大きな椿の木が見えます。樹齢400年という古木椿「大豊八重神楽」です。境内のひらけた場所に独立して立つ古木は、大豊神社の名を冠してシンボルのようです。花は紅色に白斑の入った八重だそうですが、高い場所に数輪咲く花の様子からは白斑はよくわかりませんでした。木に巡らされた竹囲いには落ちた花が一輪のせてあり、白い部分が見られましたが一重花でした。
全体にやや樹勢が弱まっているように見えました。木を守る竹囲いは根本のぎりぎりに立てられているので、根が通行人に踏まれたり、砂利の重さが根に負担になっているかもしれません。
次に来るときは花の盛りに、より元気な姿で会いたいものです。

- 大豊八重神楽_大豊神社20250402
境内の社殿と神使たち
境内には本殿を囲んで末社が4社あり、それぞれの神前には眷属の動物の像が鎮座しています。大国社は狛ねずみ、稲荷社は狛きつね、日吉社は狛さる、愛宕社は狛とび、です。
椿の季節、神使たちはとりどりの椿の花で飾られた愛らしい様子で参拝者を迎えていました。
- 狛ねずみ_大豊神社
- 狛きつね_大豊神社
- 狛とび_大豊神社
- 狛さる_大豊神社20250402
参道の狛犬は愛嬌のある顔立ちで、足元にはちゃんと椿が添えられれいました。

<訪問日:2025年4月2日 曇天>
データベース
【名称】大豊八重神楽
【品種】大豊八重神楽
【大きさ・形状】樹高:約m、幹周り:cm、m、m、cm、枝張り:m
【樹齢】推定樹齢400年
【花、葉】花形:八重、花色:紅色地白斑
【名称】大豊神社境内
【コレクション】約100本
【花期】11月〜4月
【所在】〒606-8424京都府京都市左京区鹿ケ谷宮ノ前町1
【備考】
・社務所営業時間:9時~17時、入園料無料
・定休日:年末年始
・問合せ:社務所T E L.075-771-1351
【公式サイト】https://ootoyojinja.jp/
アクセス
・JR京都駅、阪急京都河原町駅、京阪三条駅から京都市バス5銀閣寺・岩倉行き→東天王町下車→徒歩7分
・地下鉄烏丸線丸太町駅から京都市バス204高野・銀閣寺行き、93錦林車庫行き→東天王町下車→徒歩7分
参考文献
・大豊神社パンフレット
・大豊神社公式サイト:https://ootoyojinja.jp/