【椿の名所】るるパーク 屋外と屋内2つのつばき園

【椿の名所】るるパーク 屋外と屋内2つのつばき園

大分県の「るるパーク」には屋内と屋外の2つの椿園があります。広々とした屋外つばき園では約400種1,000本が3月中旬頃から見頃を迎え、屋内つばき園は屋外に先駆けて約100種の椿花を3月上旬まで見頃となります。環境の違う2つの椿園のおかげで、るるパークでは見頃の美しい椿花が長い期間楽しめるのです。同園は2012年に国際ツバキ協会国際優秀ツバキ園に認定されています。

るるパークとは

るるパークは大分県宇佐市と杵築市にまたがってある大分県立の農業公園で、正式名称は大分農業文化公園です。県民から愛称を募集して2022年に命名されました。名前の由来は「自然の中で憩え、遊べ、健康になれ、学べ、花やアウトドアを楽しめなど、たくさんの『る』がある公園」なのだそうです。

ダム湖を含む120ヘクタールもの広大な敷地には、中心施設(交流研修館、豊の国物産館、屋内つばき園、花昆虫館、管理室など)と、屋外に大型遊具、つばき園、フラワーガーデン、ハーブガーデン、果樹園、キャンプ場、ミニ動物園などがありますが、よくあるアウトドア公園ではなく農業をコンセプトに収穫体験や研修など様々な体験ができることが魅力です。春夏秋冬を彩る植物が季節によって変わる様々な表情を見せてくれます。

るるパークには2つのつばき園があります。最初にできたのは2001年の設立当時からあった屋外つばき園、2014年2月に開園したのが屋内つばき園の椿花咲苑(つばきはなさきえん)です。

例年2月10日頃から3月末まで椿まつりが行われますが、屋内では2月から、屋外では3月から椿の花の見頃を長い期間にわたって楽しむことができるのです。

2024年2月の屋内つばき園が見頃を迎える頃に訪問して感心したのは植物の管理状態もとても良いこと。「農業公園」というコンセプトのためなのか、職員の方々の確かな技術と努力に支えられた見事な椿を堪能できました。

るるパーク園内地図/公式ページより

屋内つばき園・椿花咲苑(つばきはなさきえん)

2014年2月にオープンした屋内つばき園「椿花咲苑(つばきはなさきえん)」には、原種ツバキ、黄花ツバキ、肥後ツバキ、洋種、比較的新しい登録品種など約100品種100本が植栽されています。

中でも、るるパークにしかない固有の貴重品種「宇佐椿(うさつばき)」も屋外にゆくことなく見ることができます。唐子咲きで外側の花弁が八重、極大輪という、圧倒的な存在感のある花姿です。

同じ場所で別府(べっぷ)の花も咲いていました。

別府 大分るるパーク椿園 2024025

屋内つばき園の広さは20m×25mとさほど大きく思われないのですが、立体的な展示が見応えのある空間になっています。中央施設からバリアフリーの通路を伝って行くことができるので、雨天でも、車椅子・シニアカー・ベビーカーの方、高齢者でも気軽に見に行くことができます。

室内は陽光が多く取り入れられ明るく開放的。パーゴラやベンチなどもあり、まるで中庭のような雰囲気です。

地面から高さがつけられた花壇は目の高さくらいで花が見えるので、何気なく歩き回っているだけでも綺麗な花が楽しめます。花付き、花の状態も良くて、手入れが行き届いて、さすが農業公園!と感心します。

見ることのできたツバキ・サザンカ

<2024/2/25>

黄色いツバキの原種と園芸品種

こがね錦 大分るるパーク20240225

玉シスターズ

屋外つばき園には玉之浦の大木がありますが2月はまだ開花には早い時期。一方、屋内つばき園では2月でも玉之浦の血を引く品種がすでに咲いていました。

イカリ絞り 大分るるパーク20240225
近江曙 大分るるパーク20240225
グリジシイ 大分るるパーク20240225

屋外つばき園

正面ゲートから湖を挟んだ向かい側、東ゲート近くにある屋外のつばき園は、広さ2.2ヘクタール、約400種1,000本が植栽されています。当初から敷地内に自生していた野生のツバキを含めるように設計されました。園内の周遊道路から椿園の中心地の広場に行くと、そこが小高くなっていて斜面に沿って緩やかな周遊路が作られ、あるいは林の奥に伸びる小路があることに気づきます。好きな道を好きなように散策すればいいのです。

中央広場には植栽情報を記した掲示板が設置されており、めぼしい椿の場所が花の写真付きで紹介されているのでとても役に立ちます。またそれぞれの樹木には品種名、学名などが記されています。

大分るるパーク椿園案内板

ぜひ見に行きたいのは国内最大級の玉之浦の古木と、固有品種の宇佐椿。もちろん植栽地図に載っているので容易に探せます。ただ2月の訪問時はまだ花の見頃には遠かったので、室内つばき園で宇佐椿の花を見ました。

一方でこの時期に花の盛りを迎えた椿、夢や太郎冠者などのを見ることができて幸運でした。

広い園内にゆったり植えられ大きく育った椿たちは、気持ちよく枝葉を広げ上に伸びていて健やかです。

つばき園の中央あたりから広場に向かう通路沿いに、三河雲龍(みかわうんりゅう)の大木が3本くらい集めて植えてあり、樹下にたくさんの花を落としていました。こんな景色を見たのも初めてです。

三河雲龍 大分るるパーク20240225

三河雲竜は、その名の如く、雲を掻き分け天翔る龍のような枝をした椿です。花は一重の濃紅色、三河地方の山間部の野生ヤブツバキより選抜した品種。見て頂きたいのは、花よりむしろ、グネグネ曲がったです!

三河雲龍 大分るるパーク20240225

 

また広場に面した場所に見頃を迎えつつある大きな「雲珠(うず)」を見つけました。実物は初見です。渦巻きに不思議な感動を覚えます。薔薇の花のように縦に渦巻く花弁が実に見事でした。

雲珠(UZU) 大分るるパーク椿園 2024025

訪問時は多くの木はまだ蕾の状態で、ぽつりぽつりと咲く花を探しながら園内を散策しました。

るるパークの公式サイトには、ツバキのはサクラのような短期間で満開になり散るのではなく、長い期間にさまざまな品種が順番に咲いてゆく植物だと説明しています。つまり楽しみ方も、樹下で賑やかに酒盛りを楽しむのではなくて、ゆっくり歩きまわりながら咲いている花を探して、見つけたら近寄って一つ一つの花の咲き具合、色合い、葉などをじっくり見る楽しみ方が合うと思います。

例えば、梵天白(ぼんてんじろ)というツバキ。白くて大きい花が咲きますが、このツバキの見るべきは特異な葉の形。葉の裏面の中央の1箇所から金魚の尻尾のような形の葉が飛び出ていて、梵天葉とも呼びます。見かけると近寄って面白い葉もじっくり見てしまいます。

金魚葉椿という金魚のような形の葉をしたツバキもあります。白一重錦魚葉椿はまだ花を見ることができず、金魚の形をした可愛らしい葉だけ眺めてきました。

白一重錦魚葉椿 大分るるパーク椿園 20240225

こうした変わり葉椿は花よりも葉の方が面白いので、花の時期以外にも楽しめます。

椿園の奥の方は枯葉に覆われたひっそり静かな場所で、自分の靴が踏み砕く枯葉の音を楽しみながらゆっくりと散策できます。ここはまだ若い苗木が植えられていたり、一方で古い大きな木が何本もありました。中でも白侘助の古木はとても立派で、幾つにも分かれた太い幹が長寿者の風格を感じさせます。

 

 

園内で椿に関する解説を2つ見つけました。1つは椿についての基本的な情報。ここで見られる主なツバキとして、大山白、数寄屋、紅妙蓮寺、胡蝶侘助、福鼓、御国の誉、都鳥、黒椿、一休が写真付きで紹介されています。

もう1つは、「シーボルトの椿 椿の国際化に果たしたシーボルトの偉業」という題で、九州大学名誉教授 藤枝國光氏の一文が紹介されています。日本原産のツバキから多種多彩な園芸品種が生まれ、それがヨーロッパに渡った経緯が紹介されています。オランダ東インド会社によって日本に派遣されたシーボルトは1829年の帰国に際して日本のさまざまな植物を船に積み込みます。ツバキの接木苗5本のうち4本が枯死を免れてヨーロッパにもたらされました。それぞれ、「正義(まさよし)」=Donckelaeri、「限り(かぎり)」=Ochroleuca、「白菊(しらぎく)」=Candidissima、「蝦夷錦(えぞにしき)」=Tricolor、の名で発表され、その後ヨーロッパからオセアニア、アメリカに普及して育種親としても活用されました。日本の植物であるツバキが海外に広まったこと、それにシーボルトが大きな役割を果たしたことを教えてくれる貴重な解説です。

見ることのできたツバキ・サザンカ

<2024/2/25>

玉之浦 大分るるパーク椿園 20240225

 

椿まつり

毎年2月から3月の開花期に合わせて椿まつりが開催され、椿園ガイドツアー、椿についての講演、写真コンテスト、椿切り花展示、椿油しぼり体験、お手前など、様々な展示や催事が行われます。また売店では椿の苗も販売されます。

中央施設の一角では2023年椿まつり写真コンテストの入賞作品が壁を飾っていました。

<訪問日:2024年2月25日 雨のち晴れ>

データベース

【名称】るるパーク(大分農業文化公園)つばき園・椿花咲苑

【コレクション】約400種1,000本

【花期】2月〜3月

【所在】〒879-1312 大分県杵築市山香町大字日指1-1

【備考】

・営業時間:時期によって変わる。3~6月、9~11月:9:30~17:00、7〜8月:9:30~18:00、12~2月:10:00~16:00

・定休日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始。4月、10月とGW期間中は毎日開園。

・問合せ:大分農業文化公園管理事務所 TEL.0977−28−7111

【公式サイト】https://www.oita-agri-park.or.jp/

 

アクセス

・J R日豊本線宇佐駅よりタクシーで約20分

・自動車:東九州自動車道(宇佐別府道路)大分農業文化公園ICからすぐ

 

参考文献

るるパーク公式サイト:https://www.oita-agri-park.or.jp/

現地案内板、樹名板

国際ツバキ協会公式サイト:国際優秀ツバキ園

https://internationalcamellia.org/en-us/asia-gardens-of-excellence/ruru-park-oita-agricultural-culture-park

最新日本のツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010

洋種ツバキ図鑑,小川秀世・西村舜子共著,草土出版,2019

 

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