紅葉の名所として知られる両足寺ですが、春には一本の木に紅、白、桃、桃地や白地に紅色の絞りがはいる5色咲き分けの散り椿が庭を彩ります。花の頃に本堂の西と東に対峙する2本の五色八重散椿を見にゆきました。
山口の五色八重散椿
かつて山口県下関市に館ヶ浴(やかたがえき)の五色八重散椿と呼ばれる古木椿がありました。町の天然記念物にも指定され大切にされていた椿ですが、近年台風で折れて枯死してしまいました。残念に思って調べるうちに山口市の両足寺の五色八重散椿の古木があることを知り、見にゆくことにしました。訪問したのはちょうどお彼岸の中日で、お寺は雨の中を彼岸会に集まる方々の姿がありました。
両足寺について
臨済宗東福寺派両足寺は、境内の案内板によると、約600年前に極楽寺として建立され、野火で焼失した後、明暦年間に再建され一元寺と改められたとあります。詳細資料が入手できず由来などがよくわかりませんが、古くから地元に根付いているお寺のようです。
山口市観光案内サイトでは、山門から参道、境内や敷地内の至る所に植えられた150本ものもみじが秋になると鮮やかに紅色する紅葉の名所で、もみじ寺として知られることが紹介されています。また3月には五色八重散椿も咲くことが記されています。
五色八重散椿
もみじや石蕗が両脇に並ぶ緩やかな石の階段を登ってゆくと、行く手に小さく雨に濡れて光る緑や桃色、白いものが見えてきます。石段からまっすぐ続く石畳の道はそのまま本堂へ続いており、本道の入り口すぐ手前の右手に五色八重散椿が立っていました。
あたりの地面には木に咲いた花と同じくらいの白や桃色の花弁が散っており、この木が圧倒的な花数をつけることを教えてくれます。
根元30〜40cmくらいから大きく二股に分かれ、さらにその先が二股、三股別れて伸びており、全体に葉や花が密生していています。こんもりと盛り上がりキノコのような形。高さは本道入り口の平屋の屋根を越えて5、6mはあるでしょうか。幹全体に地衣類が張り付いて、いかにも古木然とした雰囲気です。
花は白地に紅絞りや桃色に絞りの花が多く見られ、雨に濡れた葉が若緑色に光って綺麗でした。
本堂を挟んで庭の向こうにあるもう一本の西側の椿は、葉が少なく、桃色の花が目立ち華やかです。同じように地上の低いところから枝分かれして青木を広げたように四方へ枝を伸ばし、幹は地衣類に覆われています。
本堂に五色八重散椿の説明板がありました。
読みづらいので書き起こします。
五色八重散椿(ごしきやえちりつばき)
当山、古くは(応永)六〇〇年前、極楽寺という寺が建立された。その後、野火のためお堂は焼失となる。後(明暦)三五〇年前、極楽寺を再建し、一元寺と改められる。
この椿を歴史的に見て、お堂焼失、再建一元寺より見ても三五〇年の樹齢が推定される。
椿は本堂の両脇(西と東)にあり、菩提供養のために植えられたものです。
西側の椿 樹高六・三m位、樹囲八五cm位
東側の椿 樹高五・八m位、樹囲一〇一cm位
この椿は長い年月を重ね、木が大きくなってくると、一株に、白、桃、紅、桃地に紅絞り、白地に紅絞りなど、五色に咲き分ける傾向があり、つぼみは次から次へと咲き、樹全体が花で彩られる。また花は首から落ちずに、花弁が一枚一枚離れて散る特徴があり、そのまま品種名となっている。
花の開花は本来四月に入ってから、最近三月中旬よりと開花の時期がずれている。花は四月末頃までの間、楽しむことができる。
お願い 幹を傷つけたり花芽を折ったりしないで下さい。また境内に植えられたものは供養のためのもので門外不出、持ち出さないでください。
(五色八重散椿案内板より)
さらに横に張り紙があって花色についての詳しく説明されていました。それによると、この椿は本来4月に入ってから咲くもので、3月初旬から咲いた花は霜によって5色が出てこないこと、色褪せた花が散った後に本来の5色の花を見ることができる、というのです。
つまり私の訪問した時期は少し早め。本来のこの椿の美しさを見たかったら4月においでなさい、ということですね。年々この椿を見続けている方ならではの言葉に、自慢の椿のより美しい姿を見て欲しいという気持ちを垣間見た気がしました。
<訪問日:2023年3月21日(火)雨>
データベース
【名称】両足寺(りょうそくじ)の五色八重散椿
【品種】五色八重散椿
【大きさ・形状】
西側の椿:樹高約6.3m、樹囲約85cm
東側の椿:樹高約5.8m、樹囲約101cm
【樹齢】約350年
【花、葉】花形:抱え咲き八重、散り性、花色:白、桃、紅、桃地に紅絞り、白地に紅絞りなど五色咲き分け
【花期】3月中旬~4月
【所在】山口県山口市鋳銭司371
【備考】
・拝観時間: 9:00~16:30
・両足寺までの道は通行規制があり大型車は入れません。境内飲食・三脚禁止
・問合せ:山口市観光交流課 TEL:083-934-2810
【公式サイト】おいでませ山口:https://yamaguchi-city.jp/details/ak_ryousoku.html
アクセス
・J R山陽本線四辻駅からタクシー10分
・中国自動車道山口南ICから車で15分
参考文献
・おいでませ山口 山口市観光情報サイト 一般財団法人山口観光コンベンション協会: https://yamaguchi-city.jp/details/ak_ryousoku.html
・境内案内板