【椿の名所】西条市小松町 佛心寺、小松中央公園、椿温泉こまつ椿ハウス

【椿の名所】西条市小松町 佛心寺、小松中央公園、椿温泉こまつ椿ハウス

『伊予路の椿守り』という古い本を見ると愛媛県下の椿処や古木椿がたくさん紹介されていて、伊予椿と呼ばれる品種群を生み出し育んできた椿文化の源流を見る気がします。中でも愛媛県東部、江戸時代に小松藩があった小松町は寺社、個人宅に古木椿を有する場所として名を留めていました。市町村合併で西条市となった今はどのようになっているのか気になり、松山から足を伸ばして小松の椿を巡りました。

小松町と椿

西日本最高峰の石鎚山の裾野にある小松町は幕末まで小松藩一柳家が治めた土地で、町名は藩名に由来します。小松藩は1万石という小藩なれど、朱子学者の近藤篤山を招いて養正館(ようせいかん)を設立し、藩士や領民の教育を重視しました。

西条市小松町の椿の古木や関連施設を調べると以下の通りでした。

・近藤篤山旧邸 篤山椿  「伊予路の椿守」

・佛心寺の明石連、大城冠  「伊予路の椿守り」ほか

・妙口東勝谷のツバキ(有楽)  「西条市の文化財」より

・西条市小松中央公園椿千年の森  「広報さいじょう」より

・椿交流館(椿温泉こまつ)椿ハウス  西条市公式サイト

今回は近藤篤山旧邸、佛心寺、西条市小松中央公園、椿交流館(椿温泉こまつ)椿ハウスへ行きました。

 

因みに小松町以外の西条市の椿情報もいくつか見つけました。

・寿三郎紅散り  丹原町  「西条市の文化財」より

・興隆寺のツバキ(熊谷)  丹原町  「西条市の文化財」より

・伊東家の伊予大輪  丹原町  「伊予路の椿守り」より

・光明寺の袖隠古木  三芳  「伊予路の椿守り」ほか

・湯殿山無量寺の侘助  「伊予路の椿守り」ほか

 

佛心寺の明石連(あかしれん)

慶安3年(1650)2代藩主直治により菩提寺として創設した小松藩藩主一柳家の菩提寺。境内の百数十本の椿が晩秋から初春にかけて花咲くという。中でも名木とされるのが、明石連(あかしれん)。鮮紅色、八重、抱え咲き、筒しべ、中輪。花期は10月から3月。元日椿と同一との見方もある。(最新日本ツバキ図鑑)

佛心寺には特にアポイントもなく訪問したところ御住職は外出中。寺の裏に回り、庭仕事をしていた奥様にお願いして椿を見せて頂きました。

 

明石連は北庭の真ん中にありました。地際からふたつに分かれてそれぞれ伸びた主幹は途中でバッサリ切られて、わずかな枝葉が残るばかりの状態です。樹勢が弱まったための処置とのことでした。根の保護のためか周囲をロープで囲んでいます。

『伊予路の椿守り』(1985)に載る約40年前の写真と見比べるとすっかり衰えていました。

解説板(引用)

小松町指定文化財天然記念物 明石連

樹齢300年を超える古木で、町内の数多い椿の中でも特に代表的な名椿である。花は鮮やかな紅色の一重で、ヤブ椿から進化したものと云われる。早咲きで秋10月頃から春3月頃まで開花する。樹高約10m、根回り約80cm、目通り約50c mの太さを持つ。

伝説によれば、佛心寺の第12代住職猷邦和尚が茶室「臼谷庵」を創建したおりに移植した、数本の椿の内の一本と伝わる。

明石連は名椿をあげた琴歌「玉椿」の中に

見るたびに あかね色なり 足曳きの

かた山椿今ぞ咲く 花に心の越の雪

その初嵐 あかしれん

と詠まれ、古来幻の椿とされてきた。現在もここ仏心寺で、多くの人たちに守り伝えられている。

平成16年3月 小松町教育委員会

いつか樹勢が回復して花咲くことを願っています。

 

境内には多くの椿が植えられていて、太郎冠者や一子侘助などいくつかは花が咲いていました。

佛心寺の銘椿として「大城冠(だじょうかん)」もよく紹介されています。名古屋城の御殿椿「大城冠(だいじょうかん)」なのですが、小松では「だじょうかん」と呼ぶのだそうです。

門外不出の御殿椿である大城冠(だじょうかん)が小松にある理由について、小松温芳図書館越智敏雄館長は西条市のサイトで、能書家であった小松藩3代藩主一柳頼徳(ひとつやなぎよりのり:直卿(なおあきら)の名でも呼ばれる)は、尾張藩と明石藩との間に争いがあった時、両藩主の筆の師匠であったことから両者の諍い止め、その礼として大城冠を譲り受けて持ち帰ったのではといわれる、と興味深い解説をしています。

小松中央公園

「椿千年の森」づくりという事業が2008年11月の西条市の広報誌に紹介されていました。そこには、小松には藩政時代から椿の愛好家が多く、佛心寺の明石連や大城冠(だじょうかん)、本善寺の白玉、近藤篤山旧邸の篤山椿など、名椿・古木が多く残ることから、旧小松町は昭和60年(1985)に椿を町花に制定し、椿栽培事業に取り組んできたことが記されていました。

今はどのようになっているのか訪ねてみましたが場所がよく分かりません。管理事務所にいた越智和志さんが一緒に園内を探したり、色々な方に電話をして調べてくださったのですが、結局見つけることができず、ご親切に感謝しつつ公園を後にしました。見つけることは出来ませんでしたが、越智さんと椿千年の森を探したことは旅先での楽しい思い出になりました。

後日、愛媛県立小松高等学校の公式サイトで2022年3月に椿の観察や植樹をした記事を見つけて、いまだに活動が続いていることを知りました。人の背丈より高く育った篤山椿の白い花が咲く写真もあります。次は花の時期に訪問してじっくり探したいと思います。

小松中央公園から椿交流館を目指して石鎚山の方へ坂を登っていると突然、行く手の斜面に大きな太郎冠者の木が目に飛び込んできました。大きく広げた枝に桃色の花を満開に咲かせた太郎冠者は見事で、思いがけないとても嬉しい出会いでした。

 

椿交流館(椿温泉こまつ)椿ハウス

市営の温泉施設に隣接する温室と周辺に椿が200種類もあるということを知り訪ねました。

小松中央公園から石鎚山を望むサービスエリアを超えて高速道路の向こう側にある椿交流館椿温泉こまつには徒歩で行くことができます。温泉施設が開館するのを待ち、温室の鍵を開けて見せていただきました。時期が早すぎましたが数種類の花を見ることができました。

伊予侘芯 椿交流館 椿温泉こまつ温室 西条市20240218

松山から西条市への日帰り椿旅は、2月半ばで椿の開花時期に早すぎたこともあり、あまり花を見ることができませんでした。けれど西条市で出会った方々の親切に心温まる経験をしました。斉藤篤山旧邸では学芸員から丁寧な解説を受け、当日見ることができなかった篤山椿の写真を後から職員の方が送ってくれました。佛心寺では突然の訪問にもかかわらず奥様が庭に招き入れて椿を見せてくれました。小松中央公園では管理事務所の職員の方が一生懸命に椿千年の森の場所を探してくれました。昼食で立ち寄った石鎚山サービスエリアでは私がうっかりうどんの杯をひっくり返したら近くのテーブルの女性達が素早く紙ナフキンを持ってきて助けてくれました。

旅の喜びや醍醐味は旅先での出会いです。西条市の椿旅は、多くの方の親切に触れて、思い出深く忘れられないものとなりました。

 

<訪問日:2024年2月18日 晴天>

 

データベース

【名称】佛心寺の明石連

【コレクション】明石連、大城冠(だじょうかん)など

【花期】

【所在】〒799-1101 愛媛県西条市小松町新屋敷2452 甲2452

【備考】問合せ:0898-72-2352

【参考サイト】

https://saijo-imadoki.jp/2020/04/30/%E4%BB%8F%E5%BF%83%E5%AF%BA/

アクセス

・JR予讃線伊予小松駅より徒歩10分

 

 

【名称】小松中央公園椿千年の森

【所在】〒799-1101 愛媛県西条市小松町新屋敷甲2427

【備考】問合せ:0898-72-5128(西条市小松中央公園 管理事務所)

【参考サイト】

アクセス

・JR予讃線伊予小松駅より徒歩25分

・JR伊予小松駅から車で約5分

・石鎚山SAから徒歩約5分

 

【名称】椿交流館 椿温泉こまつ 椿ハウス

【コレクション】椿ハウスとその周辺に約200品種

【花期】2月上旬から4月上旬頃

【所在】〒799-1101 愛媛県西条市小松町新屋敷乙22−29

【備考】問合せ:0898-76-3511 温室の鍵は椿交流館で管理しているので声をかけて開けてもらう。

【参考サイト】

西条市公式サイト:椿ハウスとその周辺の花だより

https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/kanko/tsubakihausu.html

アクセス

・JR予讃線伊予小松駅より徒歩40分

・JR伊予小松駅から車で約7分

・石鎚山SA(上り)から徒歩約15分

 

 

 

参考文献

・伊予路の椿守り 愛媛の秀花,愛媛新聞社文化部・伊予椿同好会,愛媛新聞,1985

・西条市の文化財,西条市教育委員会,2013

・広報さいじょう,西条市,2008年11月号

・西条市公式サイト:https://www.city.saijo.ehime.jp/

・最新日本のツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010

・佛心寺案内板,西条市教育委員会

・西条市公式サイト広報専門員の気ままに西条歩き Vol.16小松地区(前編) thtps://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/citypromo/walk-komatsu01.html

・西条市公式サイト:椿ハウスとその周辺の花だより

https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/kanko/tsubakihausu.html

 

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