長崎県新上五島町はヤブツバキが多く自生する島の一つです。町の発表によるとその数およそ680万本。その新上五島町の中通島の青方郷にある「稗ノ口の大椿(ひえのくちのおおつばき)」は、幹回りが2メートル以上、推定樹齢350年という大木です。町で一番古いとされる椿の木は、細い山道の奥、斜面地にありました。私は全国椿サミットの合間に、地元でこの椿の保全に関わっているというMさんにお願いして、同じくに来ていた椿友のMさんとともに稗ノ口の大椿まで連れて行っていただきました。街中から車で細い山道を登ってゆき、立て看板のある場所で車を降りて、徒歩で山道を行くと、程なくフェンスに囲まれた大きな椿が姿を現します。
確かに大きな椿です。ですが私が見に行った2018年3月現在、幹も太い枝も大きく損なわれていました。樹勢もあまりよくなさそうです。Webには2008年のブログ記事に大きな太い枝を空に突き上げ緑の葉を茂らせる稗ノ口の大椿の写真がありました。今よりずっと健全そうでしたがすでに幹の部分に傷みが見られるので、十年以上の間にこの部分から次第の衰えてしまったのでしょう。案内してくださった地元のMさんは、以前から傷みがあったので樹勢回復を図ってみたのだが、反応ははかばかしくないと心配そうでした。専門家の手による処置を得て改善を望みたいところです。
すぐ近くに兄弟木と呼ばれる椿の大木があります。幹回り185cm樹齢は250年と推定されています。
花は鮮やかで濃い赤色です。ハート型の花弁が可愛らしい感じです。
Mさんによるとこの辺りの山にはまだまだ100本くらいは同じくらいの樹齢の椿の大木があるとのことです。
新上五島町内の椿の優良巨樹である稗ノ口の大椿(青方郷)の他にも、 月ノ浦の大椿(榊ノ浦郷)、七目の椿並木(七目郷)など椿の名所があるようです。2009年(H21)に「新上五島町つばきマップ」としてまとめられています。
かつての隠れ切支丹の島として知られるこの島は、平地が少なく山がちな地形です。鯨漁や漁業を主な生業とし、陸地の幸としては米や麦の代わりに甘藷芋を育てて暮らしていたそうです。椿から取れる椿油も貴重な生活資源だったことでしょう。選抜して残されてヤブツバキはやがて大木となって今に至ったのではないでしょうか。
データベース
【名称】稗ノ口の大椿(ひえのくちのおおつばき)
【大きさ・形状】樹高:9.5m、幹周り: 216cm、直径:68cm、枝張り:10.0m
【品種】ヤブツバキ
【樹齢】推定350年
【所在】新上五島町青方稗ノ口
【備考】新上五島町内の椿の優良巨樹(年/H)
・問合先:新上五島町 / TEL:0959-53-1111
・オフィシャルサイト:http://www.
【アクセス】
新上五島町青方の県道170号線から上五島中学校方面へ、手前の「観音岳公園入口」の案内を左折、しばらくして案内板がありそこから徒歩すぐ。