【椿の名所】ロカルノ市ツバキ公園(Locarno City Camellia Park)と椿展

【椿の名所】ロカルノ市ツバキ公園(Locarno City Camellia Park)と椿展

スイスの温暖なリゾートにある椿の公園

スイスの南でイタリアに接するロカルノ市は、北緯46度で北海道の宗谷岬よりも少し北の位置、多くの人はここに椿園があると言われてもなかなかイメージでできないでしょう。私も実際目にするまではこれほどの規模のツバキ園があるとは想像できませんでした。スイス政府観光局のH Pには「スイスで最も標高の低いマッジョーレ湖畔にあり、ツバキやマグノリアの花々、ヤシの木々が育つ温暖なリゾート」というコピーが踊ります。

約100年前にツバキが植えられて以来、ツバキはこの土地の人々に愛される木になったようです。

100年を迎えた椿祭り

園内では椿展が開催されていました。これはスイス椿協会による恒例のロカルノ・カメリア・フラワー・ショーで、パンフレットに3月29日から4月2日、そして「100」と書いてあります。この100とは「100周年」という意味でした。ロカルノの椿祭りは100年前に始まったヨーロッパで最も古い椿祭りだというのです。

ロカルノ市ツバキ公園椿展ポスター20230330

パビリオンでは美しくアレンジされた300個ものツバキの切り花と、それらの花々と古い時代を思わせる人物の写真を切り抜いて組み合わせたユニークな展示、壁に古い写真などが展示されていました。ここでも独自性のある展示方法が目を惹きます。そして定番の水盤に花を浮かべる飾りも多様なツバキの美しいものでした。

近くにはステージを設けた大型のテントがあり、これまでの椿展の様子を年毎にまとめた年表のようなパネルが展示されていました。ステージ手前には椿の切り花と共に1926年4月17日・18日に開催された椿展のポスターがパネルにして飾られていました。

スイス椿協会の歓迎

私たちはここで昼食をいただきましたが、その配膳をしてくれたのがスイス椿協会の方々です。食卓の一人一人の席には、I C Sの60周年記念会誌の表紙のタグをつけたチョコレート(チョコレートは表紙の色を模したであろうモスグリーンで色付けされていた!)が、さらにピンクの八重咲の椿のコサージュが置かれていました。スイス椿協会の方々のおもてなしの気持ちが伝わるプレゼントです。歓迎の挨拶の後の食事の間、アコーディオンとヴァイオリンによる陽気な演奏が会場を盛り上げてくれました。奏者に惜しみない拍手が送られたことは言うまでもありません。

65の花壇、1,100品種、1,476本のツバキ

この椿園ができたのは2005年に国際ツバキ会議が開催された時だそうで、現在15,000平方メートルの公園の65個の花壇に1,100品種、1,476本のツバキが植えられています。驚いたことに、そのすべての椿について位置を記した地図があり、I D番号と園芸品種名、種名が一覧表になった冊子「Camelia PARCO,AIUOLE 1-65」を貰うことができました。

他にも充実したい何種類ものパンフレットを入手しました。イタリア語なのでgoogle翻訳を利用して拾い読みしてみると、2004年から整備を始めて2005年のI C S大会でお披露目、2010年には国際優秀ツバキ園(International Camellia Garden of Excellence)に認定されました。開設当初は320本(パンフレットには約500本と記載)だったツバキはその後、精力的な栽培と収集活動によって2023年には1,500本近くになりました。その成果を生み出したのは、I C S会議で知識を得た市の庭師たちであり、スイス椿協会の協力であり、イタリア、ドイツ、ベルギー、アメリカ、中国の生産者の協力であったといいます。

ロカルノ市はこの椿園を市民の憩いの場として充実させているだけでなく、優良な観光資源とするために労力をかけているようです。同時に各種のパンフレットにはI C Sの「International Camellia Gardens of Excellence」とともに「Gardens of Switzerland」のマークが表示されていて、この公園がスイス国内で優れた、且つ国際的にも認められた公園であることを存分にアピールしています。

ここで見ることのできたツバキ

<2023年3月>

本当に多種多彩な椿の花を見ることができました。少し残念だったのは「玉之浦(Tama-no-ura)」や「タマ・ビューティ(Tama Beauty)」などの花から覆輪が抜け落ちてしまっていることでした。一方で日本の椿園でも見たことのない「天賜(Tenshi)を見ることができたのは嬉しく、いうまでもなく洋種椿の数々は圧倒的でした。特にこの日に出会った「アンドロメダ(ANDROMEDA)」という品種は、赤く細い縦絞りの入り方がとても美しく見惚れました。

ANDROMEDA

肥後椿をはじめ日本の品種も数多く見受けられ、そんな時は異国で同胞にあったような懐かしさを感じます。そして「あ、綺麗な花が咲いている!」と思って近寄ってみて、それが「紅羽衣(HAGOROMO ROSSA)」だったりすると、何故だかとても誇らしい気持ちになりました。

 

広大な椿園、盛りだくさんの見学場所に比例して滞在時間は短いものでした。あっという間に集合時間になってしまい、私たちは後ろ髪を引かれつつバスに乗り込むと次の見学場所へと向かいました。

訪問:2003年3月29日(水)曇り

参考:

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