京都の八幡にある八幡市立松花堂庭園・美術館は、庭の一角に松花堂昭乗が隠居後に住んだという「松花堂」を移築してあり、庭には椿が、そして椿を集めた椿園があります。
松花堂昭乗と椿
「松花堂」と聞くと「松花堂弁当」を思い起こすのは食いしん坊だからでしょうか。
江戸時代初期の石清水八幡の社僧・松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう:1582もしくは1584―1639)は、僧として最高位の阿闍梨であり、大変な文化人でもありました。寛永の三筆と称されるほど書に優れ、花鳥画、山水画にも長けていました。また風雅を愛でる昭乗の茶会には寛永の文化人が集いました。
松花堂弁当は、昭乗が農家で使われていた内側を十字に仕切った箱を茶会で使用する煙草盆などに使ったことから、そこに着想を得た日本料理の吉兆の創始者が昭乗好みの四つ切り箱を工夫して茶会の点心などを出す器とし、「松花堂弁当」と呼ぶようになったそうです。
松花堂昭乗の生きた江戸時代初期は椿が好まれていた時代、茶会の花にも椿は用いられました。昭乗は当時の一流文化人が画讃を寄せた『百椿図』にも載る人物。椿に対して気持ちを寄せていたのではないでしょうか。
庭園の椿
庭園の入り口を入るとすぐ祝いの盃が植えてあり出迎えてくれました。庭園には竹や笹が多く見られます。40種類あると言います。梅や桜など季節の花が彩ります。そして椿は200本以上あり、庭園内の一角は椿園になっています。そのまま奥へと伸びる敷石を進むとちらほらと椿が見えます。左手を見上げると松花堂があります。
遣り水の上に架けられた小さな橋を渡って美術館のエリアに入ると、茶席の手前に水琴窟があり、その上に据えられた手水鉢には季節を迎えた椿の花と馬酔木の花が活けてありました。
椿園
奥の椿園は通路に沿って園芸品種が植えられています。苔の庭に植えられた椿はポツポツと花を咲かせており、一つ一つの花や添えられた名札版を見ながら、ゆったりとしたひと時を味わうことができました。
庭園に植栽された椿は地図に位置が表記され、品種一覧も見られるようになっています。
・松花堂庭園つばきマップ:https://www.yawata-bunka.jp/syokado/tsubaki/index.html
・松花堂庭園のつばきの種類一覧:https://www.yawata-bunka.jp/syokado/tsubaki/list.html
椿園の奥にはやわた椿愛好会が植樹した「京牡丹」が植えられています。松花堂昭乗が公家の近衛信尋に「八幡椿」を贈ったことに因んで「八幡椿」が京牡丹の枝変わりであるとされていることから「京牡丹」を植えたと書かれています。今では八幡椿がどのような花であったか今ではわからなくなってしまいましたが、紅麒麟(こうきりん)が定説と書かれています。ここで2つの品種を見ることはできませんでしたが、京牡丹(きょうぼたん)と紅麒麟(こうきりん)はこのような花です。
八幡椿については、安楽庵策伝の『百椿集』に説明があります。曰く、八幡山の卜意という出家が持っていた椿が広まって八幡椿と呼ばれるようになった。赤く大輪で八重九重咲き雄蕊が混じる、牡丹椿とも言う。
松花堂の庭の椿は京都や関西にゆかりの品種が多く集められていて、特徴的な椿園でした。庭園はボランティア・ガイドもあるそうですから、お願いできたらもっと深くご当地椿を楽しむことができるでしょう。
散歩の後は美術館と、吉兆で松花堂弁当をいただきました。
ここで見ることのできた椿
<3月26日>
<訪問日:2022年3月26日(土)曇りのち雨>
データベース
【名称】史跡・名勝 八幡市立松花堂庭園・美術館
【コレクション】 121品種、約200本以上
【花期】11月〜12月上旬:早咲き椿、サザンカ、12月上旬〜5月上旬:椿
【所在】〒614-8077 京都府八幡市八幡女郎花43番地の1
【備考】
・営業時間:午前9時~午後5時、入園料:大人300円
・定休日:毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)、12月27日〜1月4日
・問合せ:TEL:075-981-0010
【公式サイト】https://shokado-garden-art-museum.jp/
アクセス
- 京阪電車、石清水八幡宮駅より京阪バス32 、77系統、大芝・松花堂前下車すぐ。
- 京阪電車、樟葉駅より京阪バス32 、16 、16A 、16B 、16C 、67B 、67D、 19 、19A系統、大芝・松花堂前下車すぐ。
ほか
参考文献
- 最新日本のツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010
- 八幡市立松花堂庭園・美術館公式サイト:https://shokado-garden-art-museum.jp/top/aboutus/shokadogarden/
- 松花堂庭園つばきマップ:https://www.yawata-bunka.jp/syokado/tsubaki/index.html