第29回全国椿サミット御殿場大会

御殿場と椿

「御殿場」と聞いて「椿」を思い浮かべる人は多くないでしょうが、この辺りはヤブツバキが多く見られる場所です。御殿場にまつわる椿の話は、奈良時代の呪術者である役小角が富士山を彩るために伊豆大島の椿の種子を撒いたという伝説があります。また、暴風から家や畑を守るための風除け、火伏せとして椿の木を生垣とし、椿油を採ったという暮らしの歴史もありました。

今も古い家などには名残の椿の生垣が見られます。
そして2016年には柴怒田の民家から東山旧岸邸に「太郎冠者」という品種の椿の古木が移植されたことが脚光を浴びました。その樹齢約400年といいます。太郎冠者の移植に伴い椿への関心が活発になりました。

そして2019年4月6日(土)、7日(日)御殿場市は第29回全国椿サミットが開催されました。全国椿サミットは、毎年日本のどこかの椿に関する自治体で行われる椿のイベントです。 折しも桜祭りと同じ日であり、天候も幸いして、暖かな晴天の元、桜と椿の咲き誇る華やかで美しい祭典でした。

全国椿サミットの概要

全国椿サミットは年に一度、日本のどこかの椿に関する自治体で行われる椿のイベントです。毎年椿の愛好者や椿に関する自治体や団体が参加します。もちろん私は今回も参加です。たくさんの椿友と再会しました。
第29回全国椿サミットは御殿場市おいて、2019年4月6日(土)、7日(日)に開催されました。大会関係者に伺ったところ、今年の参加者は日本ツバキ協会会員は約320名だったそうです。

初日のメイン会場は御殿場市民会館。こちらで日本ツバキ協会やサミット協議会の各種会議が行われたほか、地元の方々による展示や野点、椿の新品種の人気投票、午後からは地元の一般の方も交えてのセレモニーや椿に関する講演が行われました。

夕刻からは御殿場高原時之栖(すみか)にて椿の愛好者が集まって交流会が行われました。
2日目は、東山旧岸邸に移植された樹齢400年と目される太郎冠者の古木の視察、秩父宮記念公園に新たに整備された椿園の視察が行われました。

椿サミットの会場と展示

椿サミットのメイン会場の 御殿場市民会館では、これまで日本ツバキ協会によって新花登録された椿の新品種の写真展示と、来場者にその花に人気投票をしてもらうイベントが行われました。参加者は展示された様々な花容の椿花の写真を見て、ヤブツバキとはかけ離れた八重咲きや 獅子咲き 、華やかな絞りや斑入り、変わった唐子咲きの品種の椿を見て、「こんなにいろいろな種類があるのですね」「これも椿ですか」と驚き、熱心に見入って自分好みの花を探して投票していました。

展示会場には椿をモチーフにした初夏や絵画、板絵、食器、活花など、様々な作品が飾られました。御殿場趣味の会の方々が 展示してくださったようですが、
あまりにたくさんでとても見切れないほどです。

そして中央には『椿花図譜』の複製が長く広げられて展示されています。『椿花図譜』は1700年頃、江戸時代元禄期に作成されたと推定される椿の園芸品種の花を写生して集めた図録です。その数720種! 宮内庁所有ですが、原色原寸の姿で限定1500部発行されています。複製とはいえ中を広げて見られることはないので 貴重な体験です。時間があればゆっくり見たかったことが心残りです。


また最奥には野点の席が設けられ、和の雰囲気の中で抹茶と椿の練り切りが振る舞われました。

椿の花をかたどった練り切り

東山旧岸邸の太郎冠者

東山旧岸邸の車回しにある椿は太郎冠者という品種の古木。今回の椿サミットのシンボルツリーとも言えましょう。御殿場で全国椿サミットが開催されることになったのも、この木があったからといっても過言ではりません。
そして新東名高速道路の建設のために伐採されるところだったこの木を、御殿場市に掛け合い、もとの柴怒田から東山旧岸邸に移植して守ったのは、御殿場椿の会の活躍よるところが大きかったでしょう。

旧岸邸の太郎冠者は樹齢400年ともいわれる古木です。
太郎冠者という品種は京都や西日本では、織田信長の弟で有名な茶人であった織田有楽斎が好んだと言われることから有楽椿とも呼ばれます。非常に謎に満ちた貴重な椿です。

>東山旧岸邸の太郎冠者へ

旧岸邸では、今回のサミットに合わせて『百椿図』を模した活花の展示を行っていました。これはとても素晴らしいものでした。何しろ旧岸邸自体が一つの美術品のような数寄屋造りの美しい建物です。そこに華麗に飾られた椿はうっとりといつまでも見ていたいくらいです。

百椿図 旧岸邸20190407_9

隣接するとらやカフェでは椿サミット参加者に、椿サミットを記念したどら焼きとほうじ茶が振る舞われました。のどかな春の日差しの中、戸外でいただくどら焼きとお茶はことさらおいしく感じました。

他にも虎屋では椿サミットに合わせて椿をテーマにした和菓子のデザインを公募し、それを実際に作って販売していました。ぜひ食べて見たかったのですが、見学時間にはまだ販売されていなくてとても残念でした。

かわりに旧岸邸の売店で椿のジュレをお土産に買いました。これはいつも置いているものですが、女性向けのお土産にピッタリです。綺麗で優雅な気分を味わえます。

秩父宮記念公園

御殿場市の秩父宮記念公園は、大正天皇の第二皇子の秩父宮雍仁親王と勢津子妃が過ごした元別邸を整備、公開した公園。勢津子妃の遺言により御殿場市に寄贈されたのち公園となりました。折も桜の季節、枝垂桜の古木も満開を迎えて華やぎ、園内は家族連れで賑わっていました。

茅葺の母屋では、椿サミットに合わせて椿をあしらった生花がたくさん用意され、見学者の目を楽しませていました。

園内には樹齢300年の藪椿もあり、藪椿を主体とした椿園として構成しているようです。

この秩父宮記念公園が椿サミットの視察場所に選ばれたのは、秩父宮勢津子妃殿下御命名の「三浦乙女」という名の椿が、この度のサミットに合わせて記念に植栽されたからです。植えられたのはまだ小さな木でしたが、これからこの秩父宮記念公園のシンボルツリーになっていってくれることでしょう。

もともと秩父宮記念公園には小さな椿園もありました。あまり手入れされていなかったその場所は今回の椿サミットに向けて3年間で改良されました。かなりハードななスケジュールですが、原野のごとく荒れていた園は公園の体をなすまでになっていました。これには御殿場市内の多く方々がボランティアで参加されたそうです。素晴らしいことです。

こうして生き返りつつある椿園を視察しました。 コレクションの内容もまだこれからかな?という感じですし、名札の間違いも見られますが、これからよい椿園にしていってほしいものです。

その一方で公園の外側と隣接する駐輪場の生垣には美しい椿の品種の花が多くあり驚きました。高い木下の薄暗い場所に小さく刈り込んである生垣にはもったいないような綺麗な園芸品種の椿です。
もう少しここの椿の生垣を大事にしてもらえると嬉しいと思います。


<訪問:2029/4/6,7>