【椿の名所】上五島津和崎の椿公園と椿油の製油

新上五島津和崎の椿

第28回全国椿サミット上五島大会で新上五島町でに訪れました。大会2日目は参加者が4つのコースに分かれて新上五島町の各所へ椿の視察に出発です。

今回、大会事務局が用意した視察コースは以下の通り。

  • 頭ヶ島天主堂コース
  • 椿文化ふれあいコース
  • 椿油搾油工場見学・青方まちあるきコース
  • 奈良尾まちあるき・若松瀬戸キリシタン洞窟クルーズコース

私が参加したのは ②椿文化ふれあいコース。上五島中通島の最北端にある津和崎椿公園とその近隣で行われる昔ながらの椿油の搾油作業を見学するコースです。

中通島北部のヤブツバキと津和崎椿公園

新上五島町最大の島である中通島は、中心部から南北に長く東西に張り出して、まるで十字架のような形をしています。その島の北に細く長く伸びた最北端が津和崎で、付近に自生するヤブツバキからなる津和崎椿公園が整備されています。

新上五島町の中心地である有川郷から津和崎郷には、県道をひたすら北上します。県道は人々の暮らしをつなぐほぼ一本道のようで、道の両側に時折見える集落や教会、そして山側に海側にと細く伸びる杣道が、この厳しい土地に細々と暮らす人々の存在を知らしめます。頃は3月、椿の花咲く季節ゆえ、バスの車窓からは道の左右に生い茂るヤブツバキが深紅の花をいっぱいに咲かせる様が見られました。

新上五島津和崎の椿

新上五島津和崎の椿

新上五島 江袋教会
江袋教会
江袋教会付近
江袋教会付近。狭い土地に芋を育てかんころ餅などにする。

途中で江袋教会に立ち寄りながら津和崎郷まで着くと、そこからマイクロバスに乗り換えて林道を進み、ようやく公園の入り口に到着。

新上五島津和崎の椿公園

 

新上五島津和崎椿園

徒歩で林道から津和崎灯台に向けて続く階段状の道を登り、突端の展望所に着くと目の前には佐世保市の野崎島らとその先の対馬海峡が広がっています。手前の急な傾斜地にはヤブツバキが生えて椿園地を成しており、広さは7.8haと案内板には記されています。

あいにくの曇り空でしたが、海を背景に椿が花咲く様はなかなかに良いものです。

新上五島津和崎椿園

新上五島津和崎椿園

津和崎椿公園の椿はヤブツバキで園芸品種は見当たりません。おそらく地元に自生するヤブツバキなのでしょう。花は中輪の筒咲きで花色は濃い赤、雄しべはまとまり細く形の良いものが多く見られました。

新上五島津和崎の椿

新上五島津和崎椿園

 

公園の入り口の斜面に珍しいものを見ました。一面に胴切りされた椿です。胴切りは植物の幹部分からバッサリ切り落として仕立てる強剪定の方法です。公園の展望台付近でも一部分で胴切りした椿の区画がったので、近くにいたガイドの方にこの地方でよく行われるのか尋ねてみると、木から実をもぐために断幹(だんかん)指摘の背を低く抑えるのだとのことです。ただし樹勢が弱るので数年は収穫ができなくなるでしょうとのことでした。以前に他の場所でもその方法を聞いたことがありますが、斜面一面に地上1メートルほどで胴切りされた椿を見るのは初めてでした。

新上五島津和崎の胴切りした椿

新上五島津和崎の胴切りした椿

 

煮出し法による椿油製造

津和崎郷ではもう一つ、煮出し法(煮出し抽出法)による椿油の製油を見学しました。これは前日に新上五島町文化財課係長の高橋弘一氏の講演「新上五島町と椿」の中で紹介されていた方法の一つです。

この辺りで椿を「カタシ」と呼ぶそう。カタンの木、カタンヌキ、カタシの油、などという言い方をするという。

手順は、

  1. 椿の種子を殻ごと石臼に入れて杵で突き砕き、ペースト状になるまで擦り潰す。
  2. 大鍋に湯を炊き、ペースト状にした椿の種子を投入して煮る。
  3. 湯の表面に浮いてくる椿油を掬い取ってボウルに貯める。掬い取る道具はヒオウギ貝の殻でつくった杓子。
  4. 掬い取った椿油と一緒に入った煮出し湯を鍋にかけて煮詰め水分を飛ばす。
  5. 30分ほど火に掛けるとで水分が飛んで透明な油だけになる。水分があると鍋の音はグツグツと鳴り、水分がなくなるとピキピキ、というように音が変わるのでわかる。
  6. 容器に詰めて出来上がり。

こちらの地区では昔から椿の実の収穫時期になると、地域で集まって一緒に椿油を作ったそうです。今は小学校も無くなってしまったが、昔はその椿油を売って得たお金で学校の備品を買ったりしていたのだと、女性たちが教えてくれました。

椿油の製法 煮出し法
石臼で突き、擦り潰す。まだまだ荒い。
椿油の製法 煮出し法
かなりペースト状になって、表面に油が浮いてきた。あと少し。
椿油の製法 煮出し法
大鍋をマキで炊いて湯を沸かし、ペースト状に擦り潰した種子を入れる
椿油の製法 煮出し法
浮いてきた椿油をヒオウギの貝の殻で掬い取る

椿油を搾油する場合、多くは圧搾法という種子を押し潰して油を取り出す方法が使われます。上五島でも他の地域では圧搾法で行っているので、煮出し法が新上五島のスタンダードという訳でもなさそうです。

作業をしていう方に煮出し法でどれくらいの油が採れるのかを尋ねると、「1kgの種子から300g」とのこと、30%の収率です。これはなかなか良い搾油率でしょう。

昔から手間暇のかかる煮出し法で椿油作りが行われてきた理由は、山がちで斜面が多いため実をたくさん取れなかった場所で、少しでも無駄なく油を採るためだったのではないでしょうか。また玉締めや油搾木(あぶらしめぎ)に比べて設備は大鍋一つでできるという手軽さもあります。コミュニティで使う少量の油を手に入れるのは手頃な方法と言えるでしょう。

見学のお土産に出来立てほやほやの温かい椿油をいただきました。開けてみると黄色く透明な油からスモーキーな香りがします。鍋の湯をマキで炊くので、その臭いが油に移るのでしょう。なんとも素朴な感じがしました。

データベース

【名称】津和崎椿公園
【品種】ヤブツバキ
【花期】12月〜3月
【所在】〒857-4604 長崎県南松浦郡新上五島町津和崎郷
【備考】
・解放されており年中無休
・問合先:新上五島町観光物産協会 / TEL 0959-42-0964
・オフィシャルサイト:https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/714/
【アクセス】
新上五島町有川港から車で60分