木の樹齢は年輪を数えなければわからないのが通常ですが、この上米野椿(うわっこめのつばき)の樹齢は古文書に記された記録からほぼわかっています。
慶長11年(1606年)須山久保(現在の裾野市須山久保)の代官であった永井祐重郎は須山から杉名沢に移居し村を興し、慶長17年(1612年)に永井祐重郎の子が新しく家を構えることになり土地を分けたが、その中に椿の記載もあったと記録されているのです。(日本ツバキ協会認定優秀古木椿12号資料)そこからこの木の樹齢は四百十数年とわかるのです。
ここ御殿場周辺では、椿は火伏せや境に植えたりして、その種子から採れる椿油は大事な資源として活用されてきたとされますが、このように財産分与目録に記録が残されているということは、椿がとても重要な資源だと考えられていた証拠ではないでしょうか。
日本ツバキ協会認定優秀古木ツバキ第12号資料によると、椿は慶長15年生(1610年)前後のもので数本移植されたと考えられますが、うち2本が現存します。
上米野椿(うわっこめのつばき)と呼ばれるこの椿は、樹齢はゆうに400年以上、樹高7〜8m、主幹部幹回り1m74cm。3、4月に濃紅色の半八重の花が咲きます。花茎は6〜7cmほどですが、2019年4月5日に訪問した時は驚くほどたくさんの花を咲かせていました。
木は見学自由可能ですが、椿友達と訪問し、所有者である永井家の方に案内していただきました。上米野椿はもう先から先から花を咲かせては落としてきたようで、大木に相応しいく樹上にみっしりと咲かせた花と同じくらいに地上にも花を落としていました。樹上と地面を赤く染めるその花の量は目を見張るほどです。同行した椿の園芸業家の方が、木が生えている場所の片側が傾斜になっているので水はけが良いことがとても良いと教えてくださいました。生育場所に恵まれたことも長年生き延びてこられた理由の一つでしょう。
ただ隣接する杉名沢区公民館との境界を造成した際に根を大きく切り取られたそうです。斜面の境界側は枝も切られ、枯れたり虫瘤も多くあり、ずいぶん弱っているように見えたのが気がかりです。少しでも持ち直して欲しいものです。
上米野椿と呼ばれる老木の並びには他にも大きな椿が幾本かあります。樹齢百年以上とみられ、これらも含めて上米野椿と呼ぶべきかもしれません。
上米野椿は400年前の地域の歴史の生き証人とも言える老木です。これから長生きして欲しいと思います。
<訪問日:2019/4/5 晴天>
データベース
【名称】上米野椿(うわっこめのつばき)
【花期】3〜4月
【所在】御殿場市杉名沢248-8 永井氏宅
【備考】
・隣接する杉名沢区公民館の敷地からも見られます。
・個人宅なので礼儀と節度を持って訪問を。
アクセス
・御殿場駅よりバス。神馬回りにて、小沢向下車、徒歩6、7分