観光地として人気の古都・鎌倉ですが、鎌倉駅や八幡様の周辺を外れると、昔ながらの雰囲気を残す静かな場所もあります。古い歴史のある土地であるにも関わらず意外に古木椿が少なくて残念に思っていたところ、素敵なヤブツバキの大木と出会えました。鎌倉・山崎にある大椿です。山崎は古くは洲崎と言い、新田義貞の鎌倉攻めにおける洲崎古戦場でした。
地域のシンボル大椿
この大椿のことはインスタグラムで知りました。鎌倉は実家の隣市で慣れ親しんだ都市なので、椿のある正確な場所は分からなかったものの、何となく探し歩いてみることにしました。目星のあたりでキョロキョロ見回した時、突然大きな椿が目に飛び込んできて驚かされました。
三叉路の角から道に張り出すように枝葉を広げて立つ大椿。やや小高くなった場所に立っているので見上げるような大きさです。
高さは10mを超し、3本の幹は地際でつながって叢生し、幹から縦横無尽に伸びる枝が大きな樹冠を形成しています。まるで濃緑の巨大な傘のようです。一本の幹の地際にウロがあるものの、樹全体は椿らしい薄茶褐色の滑らかな樹皮をしていて健康そうです。花は一重の鮮やかな紅桃色、花芯は太くしっかりして、花糸の白さと花粉の黄色の対比が素朴で力強い美しさです。
訪問した2022年1月20日には多くの花が咲いていましたが、既に落ち椿が地面を赤く染めており、一方では枝に咲いた花数より多い蕾が開花を待っていました。12月から3月まで長い花期にたくさんの花が咲き続けるだと推測できます。たっぷり茂った濃緑の葉の間に間に赤い花が見え隠れするその姿は旺盛な生命力を感じさせ、とても気持ちのいい樹です。
惚れ惚れと眺めていると、たまたまこの土地を地区の共有地として管理する方々とお会いできました。お話を伺ってみると、今は廃寺となったが元々尼寺があり、椿の側の小さな石仏はその名残ではないかとのことでした。年2回の周辺の除草作業をしているそうです。
私はこの椿の存在を日本ツバキ協会のK氏のインスタグラムで知りましたが、K氏の申請により2023年3月に日本ツバキ協会の優秀古木椿に登録されました。登録台帳の記録によると樹高13m、3本に叢生した幹は胸高直径が78cm(3本合計)、3本合計の幹回りは推測196cmとあります。
また鎌倉市の「景観づくり賞」を受賞(2011年・平成23年)しており、その記録に樹齢は80年以上前からあった木だと書かれているので、現在は樹齢100年を超える古木と言えるでしょう。
これからも地域で大事にされ、多くの椿ファンを魅了する古木椿として元気にいて欲しいと思います。
<訪問日:2022年1月20日 晴天>
データベース
【名称】山崎の大椿
【品種】ヤブツバキ
【大きさ・形状】樹高:約13m、胸高直径:78センチ(叢生している3本の合計)、
幹回り:196センチ(3本に叢生しているので、それぞれの幹回りからの推計
樹形の特徴:開心自然形 株元から3本に叢生し、根部も露出している
【樹齢】約400年
【花、葉】花形:、花径:、花色:紅桃色
【花期】12月~3月
【所在】〒247‐0066 神奈川県鎌倉市山崎1330‐3
【備考】
所有者:一般社団法人山崎共有会
・問合せ:髙井一氏(T E L:090-6932‐5646)見学は常時可能。事前にまでご連絡のこと。
アクセス
・湘南モノレール「富士見町」駅より徒歩10分
参考文献
ジャパンカメリアNo.121,日本ツバキ協会,2023.9.20
鎌倉市公式サイト 第4回景観づくり賞が決定しました!:
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keikan/4kextutei.html
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keikan/documents/yamazakitubaki.pdf