横浜こどもの国にはツバキとサザンカが集められた、通称「椿の森」と呼ばれる場所があります。広さ1万5千㎡もある起伏のある小山に様々な品種が植えられており、その数約600種7,000本。花は3月から4月にかけて最盛期を迎えますが、秋のサザンカや早咲きのツバキを皮切りに、11月頃から春まで次々に咲いてゆく花を楽しめます。
こどもの国の奥にある椿の楽園
椿の森は、園の入り口から中央広場を通り過ぎて屋外プールとバナナなどが植わっている温室を越えたその先、こどもの国の一番奥にあります。こどもの国は小学生くらいまでの子供達が広い芝生広場を駆け回ったりプールで歓声をあげて1日中、思いっきり遊べる場所という印象がありますが、このように少し奥まで足を延ばすと広い温室や椿の森が広がっているので、椿の花を眺めながら散策する家族連れに出会います。
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このエリアで、まず最初に出迎えてくれるのはサザンカたちです。
背の高いサザンカが並ぶ手前側に背の低いカンツバキが並べて植えられています。花の最盛期は11月から12月。11月始め頃からサザンカが先に咲いて、12月くらいにカンツバキが咲きます。丁度良いタイミングで来られれば、椿の森に近づきながら2種類の趣きの違ったサザンカが咲く様子を見られるという寸法です。この光景はなかなかワクワクすることでしょう。
椿の森の散策方法について
椿の森の入り口から伸びる道路を挟んで左右にサザンカやツバキが植えられています。やや坂道ですが舗装された道なので、花をゆっくり眺めながら苦なく歩いて登ることができます。やがて外周道路に突き当たり、そこからは外周道路沿いに咲くツバキを見て歩くことできます。 道路沿いに眺めるだけでなく、椿の森の中に入って散策することもできます。舗装道路から細い小道を分け入り、地区は高木の下に鬱蒼と広がるA地区や、斜面に広がるB〜Eの区画を巡り歩けます。
入り口右手にある小さな看板「椿の森のご案内」には、それぞれの地区でどのような品種の椿があるのか書いてあり、参考になります。
椿の森を散策していると、所々にとても大きな看板が設置されていて、そこに椿の森や椿のことが書かれています。例えば、入り口左手の看板には、この椿の森が華道家の安達潮花氏の椿コレクションをもとに誕生したこと、最高地点の看板には椿は破邪の木でありおめでたい植物であることなどが書かれています。こうした看板で豆知識を得るのも楽しいものです。
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園内のツバキとサザンカ
<2017年11月2日>
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<2018年2月16日>
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<2020年3月22日>
温室で育つ珍しいキンカチャとハイドゥン
1月~3月には小温室でめずらしい中国の黄色いツバキのキンカチャ(金花茶)や、ベトナムのハイドゥンを見ることができます。いずれも原種のツバキです。日本の気候で育たないわけではないのですが、日本より南方産のこれらのツバキは、大事に温室で育成されています。
2月の半ばに行ってみると、温室の入り口ドアの外から濃桃色の花をたくさんつけたハイドゥンが見えました。
ハイドゥンはベトナム原産のツバキです。ぽってりと肉厚な花弁が八重に重なり合ってボリューム満点の花容です。ベトナムでは旧正月を祝う花として飾られるそうです。明るくおおらかな感じがする花は、おめでたい時に相応しいと思います。
開花した花だけでなく、咲きかけの花や蕾もそれぞれ表情があります。「蕾が可愛くて大好き!」という女性の声も良く聞きます。
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説明版には、植えて7年目の2005年3月に初めて花が咲いたとありました。世話をしていらした職員の方々の喜ぶ笑顔が目に浮かぶようです。
キンカチャ(金花茶:C.chrysantha)も見事に咲いていました。
キンカチャは中国原産の黄色い椿です。光沢のある八重の花が下向きに咲きます。
肉厚で光沢のある花弁、たっぷりと花粉を付けた雄しべ、「ザ・黄色」という感じがします。大振りな葉や蝋のようにつやつやと丸い蕾もエキゾチックなツバキです。そして名前もとても美しい椿です。センスがいいですね。
ここの温室にあるキンカチャはなかなか大きく、広げた枝にたわわに花を吊り下げていました。
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説明書きには「日本ツバキ協会副会長だった桐野秋豊さんが1980年に中国から贈られた一枝を接ぎ木して育て、ここに植えた」とありました。桐野秋豊氏(1927-2016)は著名な椿の研究家で、中国やベトナムにも何度も赴き、山中を駆け巡って新種発見や研究をされていました。一時はこの横浜こどもの国で勤務され椿の森を作ってこられたので、この由緒ある木がこの温室にあるのはそうした御縁のためなのでしょう。
フラバ(黄花茶:C.flava)も花を咲かせていました。
フラバも黄色い椿ですが、ベトナム原産種です。同じく花弁が肉厚で光沢がありますが、キンカチャより小ぶりで艶感が少なく見えます。葉もひらひらして軽やかな印象です。
花はありませんでしたが、アザレアツバキの名札が付いた苗木もありました。アザレアツバキは夏に咲くツバキ。別の場所で小さくても花を良くつけている木を見ましたのでこの木も既に花をつけているのでしょうか? 機会があれば8月にでも来てみたいと思います。
「椿の森」誕生について
「椿の森」は1971年(S46)4月に誕生しました。コレクションの礎となったのは、安達式挿花創始者・安達潮花氏が世田谷の自宅に集めた数千種類の椿コレクションです。安達氏の死後、それを資生堂が創立100周年記念事業として買い取り、こどもの国に寄贈して椿の森は誕生しました。
1987年(S62)こどもの国発行の『こどもの国 自然観察の手引』という冊子を見ると、とても詳しく日本のツバキ属の植生、ツバキとサザンカの見分け方のポイント、ツバキの花を鑑賞するための基礎知識、品種の紹介などが載っています。当時からここはツバキの魅力を多くの人に知ってもらうための大切な場所だったのだと思います。
それから46年、11月の初めに訪問した椿の森は大きく育った木が所狭しと枝を広げていました。花の時期はまだ早く、蕾が付いていない木もありました。また名札がないものも多く、手入れが大変なのだろうと察せられました。
イサム・ノグチの作品を通って椿の森へ
椿の森に隣接した広場にナットのように見える多面体の赤い物体が幾つも並んでいるのが見えました。あれ? この形、イサム・ノグチの作品じゃないのかな? と思って調べてみると、八面体のそれはやはりイサム・ノグチの「オクテトラ」でした。イサム・ノグチ(1904-88)は世界的に有名な日系2世米国人の芸術家ですが、私は彼の作品が好きで、札幌のモエレ沼公園で同じモチーフの遊具で遊んだので覚えていたのです。他にも椿の森に隣接した児童センターの周辺には「丸山」と「エントランス通路」が残されています。
椿の森に来るときは、イサム・ノグチの「エントランス通路」から入るのがお勧めです。狭い通路、トンネルをくぐり、開けた視界の先に建屋と温室と椿の森があります。もともとの設計とは変わってしまったようですが、わくわく感は十分味わえます。
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イサム・ノグチについて詳しくは横浜こどもの国オフィシャルサイトの説明をご参照ください。↓
http://www.kodomonokuni.org/m_guide/tanbo1.html
この椿の森にやってくる楽しみの一つです。
<訪問日:2017年11月2日晴れ、2018年2月16日晴れ、2020年3月22日晴れ>
椿油搾油&椿油の天ぷらイベント
横浜こどもの国椿の森の入り口にある児童センターでは、大人も子供も楽しめる様々な催しが行われます。2011年には椿油をテーマにしたイベントが行われ、私もお手伝いで参加しました。
企画内容は「椿の森」見学し椿油の搾油を見たりてんぷら試食して体験するもので、
具体的なプログラムは、
・椿油の話
・椿の森見学(つばきの実拾い、サザンカ鑑賞)
・椿油の搾油の見学
・椿油のてんぷら試食
という盛りだくさんでした。
私は小さな子供達に、椿油を肌や髪につけて乾燥から肌や髪を守るスキンケアとヘアケアに椿油がとても良いことを話させてもらいました。初めのうちは実感がなくてキョトンと聞いていた子供達も、実際に肌や爪に椿油をつけてしっとりするとびっくりしたような顔になりました。
椿油の搾油も、私の務める会社から社員2人がやってきて実演しました。通常は種子をしっかり乾燥させて搾油しますが、用意された種子は十分乾燥していなかったのであまりうまく油になりませんでした。それでも子供達は、簡易圧搾機の容器に入れた種子がギューッと押されると黄色の油となって滴り出る様子を見て歓声をあげていました。先ほど自分たちはつけた椿油がどのようにして作られるのか少しわかって楽しかったようです。
天ぷらは長崎県五島と東京都利島の椿油を使い、こどもの国・みどりのボランティアの方が揚げてくださいました。サツマイモ、シイタケ、あしたばの精進揚げを塩と醤油でいただきました。
<「椿の森」見学と椿油のてんぷら試食会概要>
開催日時:2011年11月19日(土) 11:00〜14:00
場所:横浜こどもの国 児童センター前の椿の森入口
定員:80人
企画・主催:こどもの国 日本ツバキ協会
協力:長崎県五島市 大島椿株式会社 株式会社利島椿
データベース
【名称】横浜こどもの国
【コレクション】約600種7,000本
【花期】10月〜4月
【所在】〒227-0036 神奈川県横浜市青葉区奈良町700
【備考】 問合先: 横浜こどもの国総合案内、TEL:045-961-211
・ 開館:9:30〜16:30(7~8月は17:00)、休園:水曜日、12/31〜1/1
・オフィシャルサイト:http://www.kodomonokuni.org/nature/sansaku.html#section02
【アクセス】
・東急こどもの国線こどもの国駅より徒歩3分
・小田急線「鶴川駅」より、小田急バス「奈良北団地」行(鶴07系統)で約15分
・東名横浜青葉ICもしくは町田ICより15分
参考文献
- 自然観察の手引き,横浜こどもの国
- 椿の森ご案内看板各種,横浜こどもの国
- オフィシャルサイト,横浜こどもの国