椿という文化

「巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を」
そう坂門人足に歌われた万葉の時代から、椿は人々の心に語りかける何かをもつ木でした。
この国の風土に深く根ざした椿は、私たちの生活に溶け込んで多様な文化を形成しました。華麗な園芸品種の花々、椿油、各地にある古木や名椿、椿にまつわる逸話や伝承、茶の湯で愛される花、絵画や工芸品のモチーフ、椿の炭・・・。
椿は今、世界中で愛される花となりましたが、ここ日本では、椿という文化をより深くより広く体験できます。
美しく、奥深く、多彩で魅力的な椿の世界を多くの人とともに楽しみたいと思っています。

服部緑地植物園の椿山とカメリアルーム

服部緑地公園椿山20190201

服部緑地都市緑化植物園には、路地植えされた椿の植栽地区である「椿山」と温室内の椿コーナー「カメリアルーム」の2つの椿エリアがあります。

服部緑地都市緑化植物園園内地図
服部緑地都市緑化植物園園内地図

園の東門から入ってまっすぐ進むと正面に管理棟に着きます。そこで入場券を買って右手に向かえば椿山、そのまま建物の階下に降りれば温室内のカメリアルームにゆけます。どちらから行くかはお好みで。

椿山

服部緑地都市緑化植物園の椿山は、開設当初(昭和58年)からありました。日本の椿が約350種と洋種椿が約123種あります。

ここ服部緑地都市植物園は1983年(昭和58年)に第一回全国都市緑化フェアが開催された場所でした。全国都市緑化フェアは、緑がもたらす快適で豊かな暮らしのために都市緑化を進める花と緑の祭典です。毎年、全国各地で開催されていますが、第一回目がここでした。当時の皇太子明仁親王が行啓され、記念植樹された椿の木が椿山にあります。

第1回都市緑化フェアー記念樹 服部緑地公園20180602
第1回都市緑化フェアー記念樹 服部緑地公園

椿山の入り口には椿についての案内があります。ちょっと古びてますが、初めの方は読んでから散策するとより理解が深まって楽しめるのではないでしょうか。

服部緑地公園椿山案内板20190201
服部緑地公園椿山案内板

椿園ができたわけ

今となっては当たり前のようにある椿園ですが、考えれば緑化植物園の一角になぜわざわざ椿だけを集めて植栽した「椿園」を作ったのか、少々不思議なことです。
開園当初、園内には椿が700種も植栽されました。これは当時としてかなりな規模の品種と本数ではないでしょうか。

椿園の誕生には、大阪府池田市の樹楽園、京都府の山口椿園、兵庫県宝塚市の金岡椿樹園といういくつもの園芸業者が関わっていたとのことです。また園内には椿の園芸品種131本を寄贈したことを記した記念碑がありました。

園内でボランティアをされている方に伺うと、近隣に先に述べたような園芸業がたくさんあったことを教えられました。つまりそれだけ椿の園芸が盛んで需要があったということです。椿は人気があり身近な園芸植物でした。
そしてそれは大阪や近畿地方にとどまらず、日本の各地においても言えます。江戸時代に爆発的なブームとなった椿は、園芸にとどまらず絵画のモチーフや図録のモチーフ、茶の湯などの文化においても重要な役割を担いました。椿の園芸が広まり始めて500年余り、椿は日本各地で日本人の生活文化に浸透してきました。その出発点であり中心地の一つは京都や大阪であったでしょうから、優れた園芸業者が植物園の目玉として納品できるほど多様な椿の品種のコレクションを保有していたとしてもうなづけるところです。
日本において椿が人々に好まれ身近な園芸植物であったこと、近隣に豊かな椿の園芸資源が存在したこと、そのことを思い合わせると都市緑化促進をうたって設立された第1号であるここ服部緑地都市緑地植物園に、椿が選ばれてシンボル的な椿山できたのは自然と納得できます。

温室・カメリアルーム

椿の中には冬や新春から咲く種類もありますが、世界的にツバキ属の植生分布を見るとベトナムや中国南部など暖かな地方に広く分布しています。日本はむしろツバキ属の北限地です。当然、寒さに弱い仲間もいて、そんな椿たちの為にあるのがこの温室の「カメリアルーム」です。20種以上のツバキ属が育てられています。

服部緑地公園温室20190201
服部緑地公園温室20190201
ファイアーダンス服部緑地公園温室20190201
服部緑地公園温室20190201
服部緑地公園温室20190201

中国南部の金花茶やベトナムのハイドゥン(Camellia amplexicaulis)など、寒さに弱い椿の仲間が大切に育てられています。

ハイドゥンCamellia amplexicaulis 服部緑地公園温室20190201
ハイドゥンCamellia amplexicaulis 服部緑地公園温室20190201

また、雨風から守られるため、咲いた花が長く美しい状態で楽しめることも温室の良いところです。服部緑地植物園のカメリアルームには、日本から海を渡った品種や中国の椿と掛け合わせて欧米で品種改良され洋種椿がコレクションされています。

温室内には椿外にも様々な植物が展示されています。特にサボテンなどの多肉植物はとても立派です。数十年を経て立派に育ったサボテンは見応えがあります。

椿の開花時期カレンダー

現在、椿山とカメリアルームには約500種のツバキ属の品種があります。その一部の花がいつ咲くのか一覧表でカメリアルームの入り口に貼られています。なかなか親切な工夫だと思います。

服部緑地公園カメリアルームのツバキ解説
服部緑地公園カメリアルームのツバキ解説

椿の水彩画展

服部緑地植物園ではたくさんのイベントが行われています。2019年年2月1日の訪問時には、管理棟のギャラリーで田辺津紀江さんによる水彩画展「椿に魅せられて」が開催中でした。田辺さんはこの植物園によく絵を描きにいらっしゃる方だそうです。

椿はどれも自然体の柔らかな線と色合いで、いつまでも見ていたいような優しく美しい絵でした。

こうしたイベントは植物園だけでなく多くのボランティアに支えれているようです。椿に関してはボランティアグループ「この指たかれ」が園と連携して椿の観察会の実施や園内の名札付け、開園当初から失われた品種の椿の復活を目指して育てているとのことです。とても活発な活動で驚くほどです。

服部緑地公園 掲示板
服部緑地公園の入り口には様々な催しを紹介する掲示板が

服部緑地植物園の景色

広さ約6ヘクタールの植物園は大きな池やその周りに植えられた植物によってのんびりとした空間が広がります。ちょうどボランティアガイドの方がいらしゃって、園を案内をしていただきました。
大きなラクウショウ、始めて見る寒アヤメは可憐な姿でした。甘い香りを放つ蠟梅の花、その蜜を目指してやってくる鳥。夏には子供達が池であそび、池の魚を狙ってカワセミが舞い降りるそうです。
まさに都市の中の緑地帯は人々のオアシスです。行政は昨今の財政難によって維持管理に困難があるでしょうが、市民にとって大切な場所として守り続けて欲しいものです。

データベース

【名称】服部緑地都市緑化植物園
【花期】12月〜4月
【所在】〒561-0872 大阪府豊中市寺内1-13-2
【備考】
・開園時間:午前10時~午後5時(入園は午後4時まで)
・休園日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
・入場料:大人(高校生以上)210円、中学生以下無 料
・問合先:TEL.06-6866-3621
・公式サイト:http://hattori.osaka-park.or.jp/guide/facility/botanical/
【アクセス】
・北大阪急行(御堂筋線直通)「緑地公園」下車徒歩10分

参考

  • 服部緑地都市緑化植物園公式サイト
  • Japan Camellia 110号,日本ツバキ協会,2018年8月9日

等持院の有楽椿

有楽椿 等持院20190202

夢窓疎石作と伝わる等持院の庭に降りて左手に茶室清漣亭、右手に池を見ながら小高い場所に向かって伸びる細い通路を登ると、京都随一の樹齢を誇る有楽椿に辿りつきます。

有楽椿 等持院20190202

池を見下ろす小山の苔むした土の上、ぽとりぽとりと落ちた薄桃色の椿の花が散らばっています。きっと落ちたままに残されて置かれているのでしょう。

有楽椿 等持院20190202
有楽椿 等持院20190202

等持院の有楽椿は、高さ約10m、根元の幹回りは100cmくらいで地上85cmから三又に分かれています。樹齢約400年と言われます。
花色は青みがかった薄いピンク色。寒の内から花をつけ始め春先まで咲きます。その花が落ちて苔むした地表を彩る様子はまた良い風情です。

訪問したのは2月1日でした。1月終わり頃から3月中旬にかけて花が咲くそうなので花の盛りには早かったようですが、見上げれば梢のそこかしこにちらほらと花が咲いています。

有楽椿 等持院20190202_
有楽椿 等持院20190202
有楽椿 等持院20190202

等持院の由来

臨済宗天龍寺派等持院は足利尊氏が夢窓疎石を招いて暦応4年(1341年)に創建しました。後年、幕府の地にあった等持寺もこちらに移して、足利将軍家歴代の菩提所とされます。足利尊氏の墓所や足利将軍家14代までの歴代将軍の木像を納める等持院は由緒あるお寺です。
今は山門から入り口まで家が立ち並び、背後は立命館大学があるといった具合に、現代の建物に囲まれてこじんまりした敷地に収まっています。それでも夢窓疎石作と伝わる庭に入ると、急に静かさを感じるので不思議です。

等持院と有楽椿

有楽椿は等持院創建時の1341年からここにあった訳ではありません。戦火や火災に見舞われますが、豊臣秀頼が再建。その時にこの椿も植えるよう指示したと言われます。今あるこの木が樹齢約400年というのはそこからきているのでしょう。

京都や西日本で有楽椿と呼ばれる事の多いこの椿は、関東では太郎冠者とも呼ばれます。有楽椿の名は信長の弟で大名茶人として名高い有楽斎こと織田長益が好んだ事から付けられたと言われます。有楽椿は茶の湯の花としても使われますから、茶室の隣とはふさわしい場所に植えられたと言えるかもしれません。そして有楽斎は秀吉ら豊臣家に出仕していたので、秀頼が等持寺再建に際して有楽斎にゆかりのある有楽椿を植えさせた事にも繋がりを感じます。

有楽椿 等持院20190202

<訪問:2019年2月1日晴天>

データベース

【名称】臨済宗天龍寺派等持院
【花期】1月終わり頃から3月中旬
【所在】〒603-8346 京都市北区等持院北町63番地
【備考】
・参拝時間:9:00~16:30(16:00受付終了)※12月30日~1月3日は9:00~15:00(14:30受付終了)
・年中無休
・問合先: TEL.075-461-5786
・公式サイト: http://toujiin.jp/index.html
【アクセス】
・京都市営バス10,26系統「等持院南町」下車、徒歩約8分
・京都市営バス12,15,50,51,55,59系統,JRバス「立命館大学前」下車徒歩約10
・京福北野線「等持院駅」より徒歩10分

有楽椿 等持院20190202_
有楽椿 等持院20190202_

参考文献

  • 京都新聞Web版,2017年02月05日23時18分
  • 臨済宗天龍寺派等持院パンフレット

富士精版印刷の椿カレンダー

富士精版印刷より20190201 tsubaki_carendar_B

2019年の美しい椿のカレンダーを手に入れました。

大阪の富士精版印刷株式会社は精密な印刷を得意とし、「日本一美しい印刷のできる印刷会社」を志に掲げる印刷会社です。自社の印刷技術を披露するカレンダーは、色の表現力豊かな特別なインキをを使用しているそうです。そのためか、カレンダーの椿は赤い色の発色が良く、立体感のある写真です。背景の緑が深めの色なので花が際立って見えます。飾って美しいカレンダーとして楽しめます。

富士製版印刷椿カレンダー2019年2月
富士精版印刷椿カレンダー2019年2月

表紙の「明石潟」(あかしがた:Akashigata)は江戸時代からある品種で、三倍体品種のため極大輪の大きな花を咲かせます。
1月の「蓮上の玉」(れんじょうのたま)は白い八重で名前のイメージと様に清らかな印象です。
2月は「不如帰」(ほととぎす:Hototogisu)。蓮華咲きの愛らしいピンクの椿花です。
3月の「蜑小舟」(あまおぶね:Ama-obune)も江戸時代からある品種。朱紅色が印象的です。
4月は「土佐有楽」(とさうらく:Tosa-uraku)で、太郎冠者(別名有楽椿)と呼ばれる品種の実生と推測されています。太郎冠者より少し大きい花です。
5月の「五色散椿」(ごしきちりつばき)は図鑑には五色八重散椿(Goshiki-yae-chirituubaki)と載る品種でしょうか。写真の花は白地に薄紅色の縦絞りが入った花と紅色の花ですが、「五色」と呼ばれるように、一本の木で白地に紅色の縦絞りを基本に、白、紅色、桃色、白覆輪などに咲き分ける椿です。京都の柊野の奥村家に大きな古木があります。(椿旅 京都柊野 奥村家の五色八重散り椿
6月ともなると さすがに椿の花の時期は終わっています。 この月を飾る「国の光」(くにのひかり:Kuni-no-hikari)は梅芯、一重の平開咲きが特徴の肥後椿の一つです。
7月の「酒中花」(しゅちゅうか:Shuchuka)は白地に紅覆輪、紅色の縦絞りという印象的な姿です。江戸時代からある品種です。
8月の「大虹」(おおにじ:Onij)は、表紙の「明石潟」に白斑が入ったものでやはり大きな花です。花弁の上に現れるオーロラ状の模様の出方は花ごとに異なるので、美しい文様を探素楽しみがあります。
9月になると咲く園芸品種の椿もありますが、この「松笠」(まつかさ:Matsukasa)が咲くのはもっと後です。名前の通り松ぼっくりのような花形が可愛らしい椿です。
10月の「福娘」(ふくむすめ:Fukumusume)という名を聞くと福の神のようにふっくらとした優しげな印象の 娘さんをイメージします。 福岡生まれなの椿なのでそれも掛けているのかしらと思っています。
11月は「王昭君」(おうしょうくん:Oshokun)という古代中国四大美女の一人にあやかったのではと思われる端正な花形の椿。淡い桃色地に底は濃く弁端は白くなるという花容はやはり麗しいですね。
12月で歳の終わりを飾るのは「宝合」(たからあわせ:Takara-awase)。図鑑には、白地に紅色の縦絞や紅色地に白斑、と模様の説明がされています。花の模様のバリエーションが多そうです。

それぞれの月のきれいな写真と解説は公式サイトをご覧ください。
2019年『椿』カレンダー・解説

この「椿カレンダー」 は1997年に始まり、途中で休みなどもあり今年2019年版が6年ぶりに刊行されました。
仕事でご縁があり、先日訪問した折に歴代の「椿カレンダー」、全15点を見せていただきました。

富士精版印刷より20190201 tsubaki_carendar_A
15年分の椿カレンダー(写真提供:富士精版印刷株式会社)

壮観です。
表紙だけなのに、これだけ並ぶと長年続けてきた歳月の重みを感じます。

面白いのは、2019年版のカレンダーにはAR機能を搭載していることです。
AR( Augmented Reality )は拡張現実と言われるコンピューター技術で、 現実環境に情報を付け足したり削除したりします。例えば スマートフォンを通して見た風景の上に、その場所の情報をオーバーレイして示すなどです。「ポケモンGO」や「 Ingress 」と言えば分かり易いでしょうか。十年以上前のアニメ「電脳コイル」の世界観にも通じるものがありましたっけ。

余談が過ぎましたが、この椿カレンダーにおいてもそうしたARによって、ちょっとしたお楽しみの幅が広がっていました。カレンダーの 表紙と12か月の椿の写真に ARアプリをかざすと、それぞれの椿の品種についての文字と音声による解説が体験できるのです。なかなか面白いしかけです。

古式ゆかしく日本の風土に根付いている椿ですが、その楽しみ方を今の時流に合わせることで未来につなげた感じです。印刷会社の心意気を見た気がしました。

伊豆大島の椿の名所

「椿の島」と言えば誰もが思い浮かべるのが、伊豆大島。 昔からヤブツバキが多く自生し、椿油でも知られます。

伊豆大島は祖父が事業を始めた場所であり、私にとって子供の頃から夏休みや春休みを過ごした第二の故郷です。大島はいたるところにヤブツバキが自生するだけでなく、古くから椿園がありました。椿に囲まれた日々が当たりだったのです。近年ヤブツバキに彩られ風景は年々薄れ、道をゆくアンコさんの装束をした女性の姿も見かけなくなりました。それでも伊豆大島の原風景は椿と共にあると思っています。

大島の椿の名所Map

大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイドより2018
大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイドより

島内には自生する椿の他に、防風林や生け垣として植えられた椿、 種子から油を採るためにの椿山や椿林が古くからから生活の中にありました。また園芸品種をそろえた椿園も3園あります。
そうした伊豆大島の代表的な椿の名所が「大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイド」 に紹介されています。

①新開の椿防風林
②野地の椿 
③空港下椿の散歩道
④新込の椿並木
⑤都立大島高校椿園
⑥椿花ガーデン
⑦椿の森公園
⑧さざんかの道
⑨しくぼの大木の椿並木
⑩波浮山口の椿トンネル
⑪都立大島公園
⑫泉津の椿トンネル
⑬仙寿椿

都立大島高校椿園

世界でも珍しい教育機関が管理運営する椿園。農林課の生徒たちが日々手入れをしたり教材として活用しています。 2016年 国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
>都立大島高校の記事へ
> 国際優秀ツバキ園に ついての記事へ

都立大島公園椿園

広大な敷地を有する都立公園の園内には約1000種類3200本の園芸品種の椿と大島自生種のヤブツバキ 約5000本があり、日本最大級の椿園です。 11月から4月にかけて様々な園芸品種が咲き来園者を楽しませます。2016年 国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
>都立大島公園椿園の記事へ
> 国際優秀ツバキ園に ついての記事へ

椿花ガーデン

個人経営の椿の庭園。早咲きツバキが多く、また夏咲きのアザレアツバキもあるため年間を通じてツバキ科の花が咲いています。散策が楽しめるように工夫された庭のデザインや木の状態がとても良いことから、国内トップクラスの椿の庭です。 2016年 国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
>椿花ガーデンの記事へ
> 国際優秀ツバキ園に ついての記事へ

仙寿椿 (苗の平の大椿)

岡田港に近い苗の平という場所はかつて椿油をとるために椿を育てた場所でした。その苗の平の椿林の中でひときわ大きなのが苗の平の大椿。最近は仙寿椿とも呼ばれます。
>仙寿椿(苗の平の大椿)の記事へ

泉津の椿トンネル

大島の代表的な椿トンネル。樹齢200年前後の古木が多く生えており都道の上をトンネルのように覆って独特の景観を作り出しています。近年は大型バスが通るようになりトンネルの木は高く茂りは薄くなっています。

泉津椿トンネル20060204_3
泉津椿トンネル2006年2月4日撮影
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泉津の椿トンネルと大木1991年1月6撮影

新開の椿防風林

農家が家屋や畑を今日う風から守るための防風林として、また椿油を採取するために椿が植えられていました。樹齢数十年から100年ほどの木が約3㎞にわたって続きます。この辺りには9月頃から咲く開花の速い椿、稀に白花や桃色の花を咲かせる椿が混在します。

赤禿新込間の椿並木

元は防風林として植えられた椿並木。9月下旬ころから早咲きする花、桃色の花が咲くこともあります。

波浮(山口)の椿トンネル

道路両脇に樹齢100年ほどの椿の木がトンネルを作っています。波浮には明治から昭和にかけて与謝野鉄幹、晶子、林芙美子、土田耕平、幸田露伴など著名な文人が多く訪れて作品に残したことから、これを偲んで文学碑が建てられています。

差木地シクボの大木の椿並木

樹齢100~200年の椿の古木が列をなしています。中には幹回り160cmの木もあり、5本が1994年(平成6年)に大島町の保存樹木に指定されています。

波浮と差木地の椿の名所は近いので、散歩ルートでも回れます。

第11回全国椿サミット伊豆大島大会パンフレットには他にもさまざまな椿の名所マップ掲載されていました。現在どのようになっているかの確認はとっていませんが参考に載せておきます。

第11回全国椿サミット伊豆大島大会パンフレットより(2001年)

参考文献

  • 大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイド ,大島観光協会,2018
  • 第11回全国椿サミット伊豆大島大会パンフレット,2001
  • 伊豆諸島ロケーションガイド,東海汽船,2018

仙寿椿(苗の平の大椿)

仙寿椿 20180409_2

椿の島、伊豆大島の岡田港を見下ろす高台にその椿の古木はあります。苗の平の大椿、またの名を仙寿椿(せんじゅつばき)と呼ばれるこの椿は、苗の平の椿山の中でも特に大きな椿です。
樹高約18m、幹周囲192cm、樹齢300年とされます。2017年に 都立大島高校農林科の生徒が測竿で樹高を測定した時は13m弱でした。
単幹ですっと伸びた幹の上に四方へ枝を大きく広げた形はバランスが取れて堂々としています。

花は早咲きで、12月から1月頃に花のピークを迎えるそうです。4月に咲き残った花を拾いました、小さめの一重で、ぎゅっと濃い赤色をしていました。

苗の平の椿山には約200本のヤブツバキがありますが、これらは椿油を採る目的で岡田地区の人々によって管理されてきたものだと、 案内してくださった方に伺いました。 種子から採った油を売り得た現金は、子供たちの教育費用に充てたり、ピアノを買ったりしたのだそうです。ただ今は、タイワンリスの被害が深刻で種子は全く収穫できないそです。

訪問したのは4月でしたが、仙寿椿とその周辺は、きれいに草が刈られていました。都立大島高校の 農林科の生徒さんたちやNPO方々が草刈りをしているのだそうです。

仙寿椿は、大島町の保存樹木に指定されています。
また日本ツバキ協会の優秀椿古木に認定され、2016年台帳に登録されました。
日本ツバキ協会の資料へ

データベース

【名称】都立神代植物園
【花期】10月~12月。
【所在】〒182-0017 東京都大島町苗平
【備考】
・個人所有だが、場所解放されているので常時見学は可能。
・ 問合先:
【アクセス】 大島町まで船、もしくは飛行機。岡田港から車で約5分。

参考文献

  • フェイスブック:https://www.facebook.com/%E4%BB%99%E5%AF%BF%E6%A4%BF-%E4%BC%8A%E8%B1%86%E5%A4%A7%E5%B3%B6%E5%B2%A1%E7%94%B0%E3%83%BC-367195976954626/
  • 日本ツバキ協会公式サイト:
  • https://japancamellia.org/excellent-old-camellia-register-lndex/

神代植物園つばき・さざんか園

三国紅 神代植物園20171104_2

もともと東京の街路樹などを育てるための苗圃だったのが、戦後に神代緑地として公開され、1961年には神代植物公園と改めて都内唯一の植物公園として開園されました。市民が豊かな緑や花を楽しみながら知識を得ることができるという目的ととともに、日本に古くから伝わるウメ、ツバキ、サクラなどの花木の園芸品種を多く集めて保存栽培していることが特徴で、約4,800種類、10万本の樹木が植えられています。園内は植物の種類ごとに30ブロックに分かれ、そのひとつに、つばき・さざんか園があります。

つばき・さざんか園は植物園の正門から奥に進み雑木林を抜けた先、梅園と向かい合う位置にあります。深大寺門から入ればすぐです。

神代植物園雑木林20171104
神代植物園雑木林 20171104
椿園に繋がる橋には椿のレリーフ 神代植物園
椿園に繋がる橋には椿のレリーフ 神代植物園

ツバキ園やサザンカ園がある植物園は国内に有数ありますが、ここ神代植物公園のように「つばき・さざんか園」というように併記してあるところはあまり見ません。その名の通りここにはツバキとサザンカの園芸品種がそれぞれ多数あります。

神代植物公園つばき・さざんか園のコレクションは、江戸時代に植木生産の中心地であった染井・駒込から埼玉県安行市に移ったツバキを用いているので、江戸の椿を受け継いでいると言えます。約260品種のツバキがあるうち約100種類は江戸時代の文献に見られる伝統的な品種です。(パンフレット「神代植物公園の椿」より)

園に立つ看板には、このように書いてあります。

ツバキとサザンカは共に日本原産の植物です。椿の栽培・鑑賞は江戸時代初期に大流行し、多くの園芸品種が作られました。美しい園芸品種が多く、早春を彩る花木として世界各地で愛好されています。中でもアメリカには戦後に大流行して新しい品種が数多く作られています。サザンカには咲く時期により、サザンカ系、カンツバキ系、ハルサザンカ系があり晩秋から早春まで楽しむことができます。

神代植物園つばき・さざんか園看板より
椿の品種解説 神代植物公園20180306
椿の品種解説 神代植物公園

ツバキ属のシーズンは秋のサザンカから始まります。

秋はサザンカの天下です。明るく高い秋空に軽やかな花弁をはためかせて咲くサザンカはとても美しいもの。よく咲いた木に近づくと爽やかな芳香に包まれます。適度に間隔をあけて植えられた木々の中を散歩できるこの園ならではの楽しさです。

サザンカ 神代植物園20171104
緋乙女Hi-otome 神代植物園20171104_5
緋乙女Hi-otome 神代植物園20171104

ツバキ属のオンシーズンは園芸品種は3月から4月ですが、それは園芸品種の多くがこのころに咲くヤブツバキ(Camellia.Japonica.L)から生まれたものだからです。

八重姫Yae-hime 神代植物公園20180306_1
八重姫Yae-hime 神代植物公園20180306
朧月? 神代植物公園20180306_3

開花時期の目安はサザンカは10月下旬から11月中旬、ツバキは1月から4月いっぱいとなっています。もっとも多く花が咲いているのは3月~4月頃ですが、早咲き、遅咲きのツバキや、サザンカ(10月〜12月)、カンツバキ(11月〜3月)、ハルサザンカ(12月〜4月)など、花期がさまざまな品種があるので10月~5月まで花を楽しむことができます。

原種から鑑賞を目的とした園芸品種が数多く生みだされました。特に江戸時代はヤブツバキの品種改良が盛んでした。やがて海外に渡った椿が世界中に広まったのは先の看板の書かれている通りです。現在も園芸品種は世界各地で誕生していますが、その数は数千種に及びます。

ここで見られるツバキとサザンカ

<11月:秋のサザンカとツバキ>

田毎の月Tagoto-no-tsuki 神代植物園20171104
田毎の月Tagoto-no-tsuki 神代植物園20171104

<3月:春のツバキとサザンカ>

神代都鳥

神代都鳥は、ここ神代植物園つばき・さざんか園で発見された新品種です。他の場所で見ることはできない固有種といえます。江戸時代からある名花「都鳥」に似ていることからこの名がつけられました。

都鳥の花色が白なのに対して神代都鳥は桃色。蓮華咲きで3~4月が見頃です。

ツバキ展

毎年3月から4月にかけて開催される「椿・さくらまつり」のさなか、椿にテーマを絞ったつばき展や講演会、つばき・さざんか園ガイドツアーなどが行われています。2018年は以下のようでした。

  • 3月10日(土)13:30〜15:30 講演会「椿の歴史と江戸ツバキ」小泉不二男(日本ツバキ協会)
  • 3月25日(土)10:30〜 約90分 つばき・さざんか園見学ツアー,日本ツバキ協会江戸椿研究会
  • 3月30日(金),3月31日(土),4月1日(日)各日10:30〜,13:30〜,約60分 ,椿・さくらガイドツアー,ボランティアガイド
  • 3月20日(火)〜25(日)つばき展,植物会館1階展示室,日本ツバキ協会協賛

なかなか充実したプログラムで、園のコンセプト沿った取り組みをしようという心意気を感じます。おかげで来園者は、春爛漫の公園で美しい花に囲まれて豊かなひと時を過ごすことができるでしょう。

他にも年間を通じて様々な催しがありますが、サザンカを見に訪れた時は、折しも菊の季節、正門正面に段が設けられ丹精された鉢植えや盆栽が出迎えてくれました。いつ訪ねても楽しい散歩が出来る場所です。

データベース

【名称】都立神代植物園

【花期】10月頃からサザンカが咲き始め、3月〜4月はツバキが最盛期を迎える。

【所在】〒182-0017 調布市深大寺元町5-31-10

【備考】

  • 開館時間や休日: 開園時間 9:30~17:00、入園料無料、休園日 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29~1月1日)
  • 問合先:神代植物公園サービスセンター TEL. 042-483-2300
  • 公式サイト: http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index045.html

【アクセス】

  • 調布駅から:小田急バス吉祥寺駅または三鷹駅行き神代植物公園前下車、または京王バス深大寺行き神代植物公園下車。つつじヶ丘駅から京王バス深大寺行き神代植物公園下車
  • JR中央線三鷹駅または吉祥寺駅から:小田急バス調布駅北口または深大寺行き神代植物公園前下車。バスの乗車時間は約20分程度。

参考文献

  • 東京都神代植物公園パンフレット,公益財団法人東京都公園協会
  • 神代植物公園の椿,公益財団法人東京都公園協会

<訪問:2017/3/23,2017/11/4,2018/3/6 ほか>

ふきよせ 冬椿

アトリエうかい冬椿2

クリスマスプレゼントにいただいた、アトリエうかいの「ふきよせ冬椿」は、椿ファンでなくとも思わず「わあぁぁ」と声を上げてしまう愛らしいお菓子です。それはパッケージだけでなく中のお菓子ひとつひとつに言えます。

旬お素材を使った季節限定のふきよせシリーズは、どれも美味しいし楽しいし、いただいても差し上げても嬉しい一品です。中に入っているのは、

木苺とバニラのロールクッキー、林檎と胡桃のシナモンクロケ、糖衣がけきな粉クッキー、みかんのほろほろクッキー、果実のメレンゲ(林檎・黒すぐり)、冬色の金平糖

どれからつまもうか迷ってしまう。ひとつ食べたら他の味も気になって次々手を伸ばしてしまう。見て嬉しい、食べて幸せなおやつです。こんなスイーツがあれば12月の忙しさも苦にはなりません。唯一困るのは、ひとつひとつと食べて行くとだんだん中が減ってしまうのを見るのがとても悲しいこと。

楽しすぎることはいつか終わる寂しさと背中合わせ。そう子供の頃に教えてくれたメアリーポピンズの本を思い出す、そんなお菓子です。

暦菓子 雪の椿

日本橋長兵衛雪の椿
日本橋長兵衛雪の椿

今年のお正月のお菓子は、日本橋長兵衛の「雪の椿」。季節限定のお菓子です。

「雪の椿」名の通り、白地に金の模様を施した上に赤い椿の花が咲く小包装のデザインが上品で素敵です。お正月の手土産にもぴったり。

包みを開くと、みずみずしく優しい色合いの椿の花を模した和菓子が顔を出します。橙色がかった赤い花弁の下は深い緑色。花弁の中央にはほんのり黄色い丸が見えます。ちゃんと「椿」とわかる姿に感心するとともに、美しい色形にしばし見とれます。和菓子を前にするといつも、食べるのがもったいないと思うのと、どんな味か食べたいという気持ちのせめぎ合いがあります。もちろん最後に勝つのは食べたい気持ちです。

つやつやと光るほどみずみずしい見た目から水羊羹のようなものかな、と思って口にすると、おや?

確かに羊羹なのですが、寒天の滑らかさ、餅のようなもっちりとした歯触り、餡の舌触り・・・

これは何かしら?と不思議になる食感。花粉をイメージして赤い中に入れられた黄色の丸いものはやわらかい餅。歯切れ良すぎず、まとわりつかず、口の中全体と舌で感じる食感は絶妙です。味よりも風味よりもその食感に心奪われました。

ちなみに緑の部分は抹茶味。

椿旅 新上五島、稗ノ口の大椿

新上五島の稗ノ口の大椿

長崎県新上五島町はヤブツバキが多く自生する島の一つです。町の発表によるとその数およそ680万本。その新上五島町の中通島の青方郷にある「稗ノ口の大椿(ひえのくちのおおつばき)」は、幹回りが2メートル以上、推定樹齢350年という大木です。町で一番古いとされる椿の木は、細い山道の奥、斜面地にありました。 続きを読む →