【椿の名所】日光金谷ホテル小食堂格天井の椿絵
日本のクラッシックホテルの最高峰の一つ日光金谷ホテル。明治という時代を色濃く感じさせる和洋折衷の建物や調度ですが、小食堂の内装はまさにその極み。多彩な装飾は空間に華やぎをもたらします。格天井を彩るのは鮮やかな花鳥画などで、椿の絵も見つけることができます。
日光金谷ホテルについて
日光金谷ホテルは、日本のホテル黎明期に創業し、戦前戦後を通じて歴史ある建造物と西洋のホテルスタイルを提供し続けて今に至るクラシックホテル。1873年(明治6年)創業で現存する日本最古のリゾートホテルです。
憧れとともに、どこか懐かしい気持ちになるのは、和と洋が入り混じり調和した建築や調度だからでしょうか。居心地の良い空間でスタッフのもてなしを受けて過ごすうちに寛いだ気分になり、また来たいと思うようになります。
創業者の金谷善一郎氏が自宅の一部を外国人の宿泊施設として開業したことに始まり、増改築を経て現在に至る日光金谷ホテルは、J.C.ヘボン博士、女性旅行家イザベラ・バード、アルベルト・アインシュタイン博士、ヘレン・ケラー、第34代アメリカ合衆国アイゼンハワー大統領、インデラ・ガンジーなど著名な外国人も数多く訪れています。また歴史的価値を持つ各館は国の登録有形文化財に登録されています。
小食堂の天井画の椿絵
この地で1893年(明治26年)にホテルが開業した当初はダイニングルームだったという現在の小食堂は、日光金谷ホテルで最も歴史のある場所だとホテルは説明します。洋式の正餐にも使用される小食堂は、花鳥風月が描かれた格天井、牡丹の花の彫刻をあしらった円柱、猪目模様の飾りや、十二支の彫刻の壁飾りなどの和の装飾が満載です。華麗な和洋折衷の空間での会食は気分も華やぐことでしょう。ホテルの許可を得て披露宴のセッティングをした室内を見せていただきました。(撮影の許可も得ています)
天井は格天井で格式を感じさせます。ひとつひとつの格子の中に絵を描いた格間絵(ごうまえ)は、丸く円を描き、その中に細密な絵が描かれています。よく見ると絵の種類は大きく3つありました。
一つは四季の風情を感じさせる花や鳥、二つ目は様々な楽器で天上界の音楽を奏でる飛天や鳳凰、そして幾何学模様です。
これらは配置場所が決まっているようです。
幾何学模様は壁や窓に沿って室内をぐるりと囲うように配置されています。入り口から見て左手前方にある花の彫刻をあしらった円柱を境に内側、部屋の中央あたりには、緑の地色に飛天と鳳凰などが描かれています。その他は花鳥画です。幾何学模様の下は給仕するスタッフの動線、飛天や鳳凰の下は上座ということでしょうか。
椿の絵を探すと、紅椿と白椿、山茶花を見つけました。
紅椿は、ヤブツバキの花が2輪咲き、蕾が5つ、緑の葉が鮮やかです。
白椿は暗緑色の葉に囲まれて、花弁も花芯も胡粉で描かれた真っ白な花が3輪咲いており、小枝の先にはオレンジ色の腹をした小禽が一羽止まっています。
山茶花は白の一重で多数咲いており、白椿よりも軽やかに描かれていて花弁のヒラヒラした感じが伝わります。
いずれも丸く切り抜いた画面の中に地色を置かずにいた目に描かれています。シンプルだけれど丁寧に書き込まれた繊細な絵です。
天井画の作者は不詳だそうですが、質の高い絵は確かな腕前を感じさせます。
ホテルの方に天井画の中には一枚だけ不完全な蝶の絵があると伺いました。日光東照宮の陽明門にある逆柱と同じで、完全になると後は崩壊に向かうので、それを避けるためにわざと不完全にするという意匠だそうです。
こうした日光東照宮や寺社仏閣に見られる意匠はホテル館内の各所で見られます。土地柄のためだけでなく創業者の金谷善一郎氏が日光東照宮に楽人(がくじん)として奉職していた縁も関係するのかもしれません。
ホテルでは館内ガイドツアーを行っていて、館内各所に散りばめられた様々な工夫や魅力を発見する楽しみに手を貸してもらえます。例えば、金谷家の家紋笹竜胆(ささりんどう)は金谷ホテルのロゴマークやカテッジ・インの意匠としても見られます。日光東照宮でもホテル館内でも見られるのは三猿や、獏のような象のような彫刻、3体の眠り猫など。フロント裏の階段の大谷石石組みは雰囲気があり、メインダイニング迦陵頻加やメインダイニング前階段の葵の紋入りの擬宝珠ランプは異様な存在感を放っています。館内探訪がこれほど楽しいホテルはなかなかありません。
2023年に創業150年を迎えた日光金谷ホテルの特設サイトではたくさんの歴史の宝物を知ることができて楽しめます。
金谷ホテル創業150周年記念サイト:https://www.kanayahotel.co.jp/150th/#campaign-treasure
- 小食堂
<訪問日:2022年8月、2025年11月
データベース
【名称】日光金谷ホテル
【所在】〒321-1401 栃木県日光市上鉢石町1300
・問合せ:TEL : 0288-54-0001
【公式サイト】https://www.kanayahotel.co.jp/nkh/
アクセス
・JR日光駅より徒歩約5分
・東武日光駅から東武バス「奥細尾・中禅寺温泉・湯元温泉行」に乗車→「神橋(しんきょう)」バス停下車、坂を登る。
・東武日光駅から下車無料のシャトルバスあり。
参考文献
・パンフレット
・金谷ホテル公式サイト:https://www.kanayahotel.co.jp/nkh/



















