服部緑地植物園の椿山とカメリアルーム

服部緑地公園椿山20190201

服部緑地都市緑化植物園には、路地植えされた椿の植栽地区である「椿山」と温室内の椿コーナー「カメリアルーム」の2つの椿エリアがあります。

服部緑地都市緑化植物園園内地図
服部緑地都市緑化植物園園内地図

園の東門から入ってまっすぐ進むと正面に管理棟に着きます。そこで入場券を買って右手に向かえば椿山、そのまま建物の階下に降りれば温室内のカメリアルームにゆけます。どちらから行くかはお好みで。

椿山

服部緑地都市緑化植物園の椿山は、開設当初(昭和58年)からありました。日本の椿が約350種と洋種椿が約123種あります。

ここ服部緑地都市植物園は1983年(昭和58年)に第一回全国都市緑化フェアが開催された場所でした。全国都市緑化フェアは、緑がもたらす快適で豊かな暮らしのために都市緑化を進める花と緑の祭典です。毎年、全国各地で開催されていますが、第一回目がここでした。当時の皇太子明仁親王が行啓され、記念植樹された椿の木が椿山にあります。

第1回都市緑化フェアー記念樹 服部緑地公園20180602
第1回都市緑化フェアー記念樹 服部緑地公園

椿山の入り口には椿についての案内があります。ちょっと古びてますが、初めの方は読んでから散策するとより理解が深まって楽しめるのではないでしょうか。

服部緑地公園椿山案内板20190201
服部緑地公園椿山案内板

椿園ができたわけ

今となっては当たり前のようにある椿園ですが、考えれば緑化植物園の一角になぜわざわざ椿だけを集めて植栽した「椿園」を作ったのか、少々不思議なことです。
開園当初、園内には椿が700種も植栽されました。これは当時としてかなりな規模の品種と本数ではないでしょうか。

椿園の誕生には、大阪府池田市の樹楽園、京都府の山口椿園、兵庫県宝塚市の金岡椿樹園といういくつもの園芸業者が関わっていたとのことです。また園内には椿の園芸品種131本を寄贈したことを記した記念碑がありました。

園内でボランティアをされている方に伺うと、近隣に先に述べたような園芸業がたくさんあったことを教えられました。つまりそれだけ椿の園芸が盛んで需要があったということです。椿は人気があり身近な園芸植物でした。
そしてそれは大阪や近畿地方にとどまらず、日本の各地においても言えます。江戸時代に爆発的なブームとなった椿は、園芸にとどまらず絵画のモチーフや図録のモチーフ、茶の湯などの文化においても重要な役割を担いました。椿の園芸が広まり始めて500年余り、椿は日本各地で日本人の生活文化に浸透してきました。その出発点であり中心地の一つは京都や大阪であったでしょうから、優れた園芸業者が植物園の目玉として納品できるほど多様な椿の品種のコレクションを保有していたとしてもうなづけるところです。
日本において椿が人々に好まれ身近な園芸植物であったこと、近隣に豊かな椿の園芸資源が存在したこと、そのことを思い合わせると都市緑化促進をうたって設立された第1号であるここ服部緑地都市緑地植物園に、椿が選ばれてシンボル的な椿山できたのは自然と納得できます。

温室・カメリアルーム

椿の中には冬や新春から咲く種類もありますが、世界的にツバキ属の植生分布を見るとベトナムや中国南部など暖かな地方に広く分布しています。日本はむしろツバキ属の北限地です。当然、寒さに弱い仲間もいて、そんな椿たちの為にあるのがこの温室の「カメリアルーム」です。20種以上のツバキ属が育てられています。

服部緑地公園温室20190201
服部緑地公園温室20190201
ファイアーダンス服部緑地公園温室20190201
服部緑地公園温室20190201
服部緑地公園温室20190201

中国南部の金花茶やベトナムのハイドゥン(Camellia amplexicaulis)など、寒さに弱い椿の仲間が大切に育てられています。

ハイドゥンCamellia amplexicaulis 服部緑地公園温室20190201
ハイドゥンCamellia amplexicaulis 服部緑地公園温室20190201

また、雨風から守られるため、咲いた花が長く美しい状態で楽しめることも温室の良いところです。服部緑地植物園のカメリアルームには、日本から海を渡った品種や中国の椿と掛け合わせて欧米で品種改良され洋種椿がコレクションされています。

温室内には椿外にも様々な植物が展示されています。特にサボテンなどの多肉植物はとても立派です。数十年を経て立派に育ったサボテンは見応えがあります。

椿の開花時期カレンダー

現在、椿山とカメリアルームには約500種のツバキ属の品種があります。その一部の花がいつ咲くのか一覧表でカメリアルームの入り口に貼られています。なかなか親切な工夫だと思います。

服部緑地公園カメリアルームのツバキ解説
服部緑地公園カメリアルームのツバキ解説

椿の水彩画展

服部緑地植物園ではたくさんのイベントが行われています。2019年年2月1日の訪問時には、管理棟のギャラリーで田辺津紀江さんによる水彩画展「椿に魅せられて」が開催中でした。田辺さんはこの植物園によく絵を描きにいらっしゃる方だそうです。

椿はどれも自然体の柔らかな線と色合いで、いつまでも見ていたいような優しく美しい絵でした。

こうしたイベントは植物園だけでなく多くのボランティアに支えれているようです。椿に関してはボランティアグループ「この指たかれ」が園と連携して椿の観察会の実施や園内の名札付け、開園当初から失われた品種の椿の復活を目指して育てているとのことです。とても活発な活動で驚くほどです。

服部緑地公園 掲示板
服部緑地公園の入り口には様々な催しを紹介する掲示板が

服部緑地植物園の景色

広さ約6ヘクタールの植物園は大きな池やその周りに植えられた植物によってのんびりとした空間が広がります。ちょうどボランティアガイドの方がいらしゃって、園を案内をしていただきました。
大きなラクウショウ、始めて見る寒アヤメは可憐な姿でした。甘い香りを放つ蠟梅の花、その蜜を目指してやってくる鳥。夏には子供達が池であそび、池の魚を狙ってカワセミが舞い降りるそうです。
まさに都市の中の緑地帯は人々のオアシスです。行政は昨今の財政難によって維持管理に困難があるでしょうが、市民にとって大切な場所として守り続けて欲しいものです。

データベース

【名称】服部緑地都市緑化植物園
【花期】12月〜4月
【所在】〒561-0872 大阪府豊中市寺内1-13-2
【備考】
・開園時間:午前10時~午後5時(入園は午後4時まで)
・休園日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
・入場料:大人(高校生以上)210円、中学生以下無 料
・問合先:TEL.06-6866-3621
・公式サイト:http://hattori.osaka-park.or.jp/guide/facility/botanical/
【アクセス】
・北大阪急行(御堂筋線直通)「緑地公園」下車徒歩10分

参考

  • 服部緑地都市緑化植物園公式サイト
  • Japan Camellia 110号,日本ツバキ協会,2018年8月9日

等持院の有楽椿

有楽椿 等持院20190202

夢窓疎石作と伝わる等持院の庭に降りて左手に茶室清漣亭、右手に池を見ながら小高い場所に向かって伸びる細い通路を登ると、京都随一の樹齢を誇る有楽椿に辿りつきます。

有楽椿 等持院20190202

池を見下ろす小山の苔むした土の上、ぽとりぽとりと落ちた薄桃色の椿の花が散らばっています。きっと落ちたままに残されて置かれているのでしょう。

有楽椿 等持院20190202
有楽椿 等持院20190202

等持院の有楽椿は、高さ約10m、根元の幹回りは100cmくらいで地上85cmから三又に分かれています。樹齢約400年と言われます。
花色は青みがかった薄いピンク色。寒の内から花をつけ始め春先まで咲きます。その花が落ちて苔むした地表を彩る様子はまた良い風情です。

訪問したのは2月1日でした。1月終わり頃から3月中旬にかけて花が咲くそうなので花の盛りには早かったようですが、見上げれば梢のそこかしこにちらほらと花が咲いています。

有楽椿 等持院20190202_
有楽椿 等持院20190202
有楽椿 等持院20190202

等持院の由来

臨済宗天龍寺派等持院は足利尊氏が夢窓疎石を招いて暦応4年(1341年)に創建しました。後年、幕府の地にあった等持寺もこちらに移して、足利将軍家歴代の菩提所とされます。足利尊氏の墓所や足利将軍家14代までの歴代将軍の木像を納める等持院は由緒あるお寺です。
今は山門から入り口まで家が立ち並び、背後は立命館大学があるといった具合に、現代の建物に囲まれてこじんまりした敷地に収まっています。それでも夢窓疎石作と伝わる庭に入ると、急に静かさを感じるので不思議です。

等持院と有楽椿

有楽椿は等持院創建時の1341年からここにあった訳ではありません。戦火や火災に見舞われますが、豊臣秀頼が再建。その時にこの椿も植えるよう指示したと言われます。今あるこの木が樹齢約400年というのはそこからきているのでしょう。

京都や西日本で有楽椿と呼ばれる事の多いこの椿は、関東では太郎冠者とも呼ばれます。有楽椿の名は信長の弟で大名茶人として名高い有楽斎こと織田長益が好んだ事から付けられたと言われます。有楽椿は茶の湯の花としても使われますから、茶室の隣とはふさわしい場所に植えられたと言えるかもしれません。そして有楽斎は秀吉ら豊臣家に出仕していたので、秀頼が等持寺再建に際して有楽斎にゆかりのある有楽椿を植えさせた事にも繋がりを感じます。

有楽椿 等持院20190202

<訪問:2019年2月1日晴天>

データベース

【名称】臨済宗天龍寺派等持院
【花期】1月終わり頃から3月中旬
【所在】〒603-8346 京都市北区等持院北町63番地
【備考】
・参拝時間:9:00~16:30(16:00受付終了)※12月30日~1月3日は9:00~15:00(14:30受付終了)
・年中無休
・問合先: TEL.075-461-5786
・公式サイト: http://toujiin.jp/index.html
【アクセス】
・京都市営バス10,26系統「等持院南町」下車、徒歩約8分
・京都市営バス12,15,50,51,55,59系統,JRバス「立命館大学前」下車徒歩約10
・京福北野線「等持院駅」より徒歩10分

有楽椿 等持院20190202_
有楽椿 等持院20190202_

参考文献

  • 京都新聞Web版,2017年02月05日23時18分
  • 臨済宗天龍寺派等持院パンフレット

伊豆大島の椿の名所

「椿の島」と言えば誰もが思い浮かべるのが、伊豆大島。 昔からヤブツバキが多く自生し、椿油でも知られます。

伊豆大島は祖父が事業を始めた場所であり、私にとって子供の頃から夏休みや春休みを過ごした第二の故郷です。大島はいたるところにヤブツバキが自生するだけでなく、古くから椿園がありました。椿に囲まれた日々が当たりだったのです。近年ヤブツバキに彩られ風景は年々薄れ、道をゆくアンコさんの装束をした女性の姿も見かけなくなりました。それでも伊豆大島の原風景は椿と共にあると思っています。

大島の椿の名所Map

大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイドより2018
大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイドより

島内には自生する椿の他に、防風林や生け垣として植えられた椿、 種子から油を採るためにの椿山や椿林が古くからから生活の中にありました。また園芸品種をそろえた椿園も3園あります。
そうした伊豆大島の代表的な椿の名所が「大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイド」 に紹介されています。

①新開の椿防風林
②野地の椿 
③空港下椿の散歩道
④新込の椿並木
⑤都立大島高校椿園
⑥椿花ガーデン
⑦椿の森公園
⑧さざんかの道
⑨しくぼの大木の椿並木
⑩波浮山口の椿トンネル
⑪都立大島公園
⑫泉津の椿トンネル
⑬仙寿椿

都立大島高校椿園

世界でも珍しい教育機関が管理運営する椿園。農林課の生徒たちが日々手入れをしたり教材として活用しています。 2016年 国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
>都立大島高校の記事へ
> 国際優秀ツバキ園に ついての記事へ

都立大島公園椿園

広大な敷地を有する都立公園の園内には約1000種類3200本の園芸品種の椿と大島自生種のヤブツバキ 約5000本があり、日本最大級の椿園です。 11月から4月にかけて様々な園芸品種が咲き来園者を楽しませます。2016年 国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
>都立大島公園椿園の記事へ
> 国際優秀ツバキ園に ついての記事へ

椿花ガーデン

個人経営の椿の庭園。早咲きツバキが多く、また夏咲きのアザレアツバキもあるため年間を通じてツバキ科の花が咲いています。散策が楽しめるように工夫された庭のデザインや木の状態がとても良いことから、国内トップクラスの椿の庭です。 2016年 国際ツバキ協会により国際優秀ツバキ園に認定されました。
>椿花ガーデンの記事へ
> 国際優秀ツバキ園に ついての記事へ

仙寿椿 (苗の平の大椿)

岡田港に近い苗の平という場所はかつて椿油をとるために椿を育てた場所でした。その苗の平の椿林の中でひときわ大きなのが苗の平の大椿。最近は仙寿椿とも呼ばれます。
>仙寿椿(苗の平の大椿)の記事へ

泉津の椿トンネル

大島の代表的な椿トンネル。樹齢200年前後の古木が多く生えており都道の上をトンネルのように覆って独特の景観を作り出しています。近年は大型バスが通るようになりトンネルの木は高く茂りは薄くなっています。

泉津椿トンネル20060204_3
泉津椿トンネル2006年2月4日撮影
泉津の椿トンネルと大木19910106_2
泉津の椿トンネルと大木1991年1月6撮影

新開の椿防風林

農家が家屋や畑を今日う風から守るための防風林として、また椿油を採取するために椿が植えられていました。樹齢数十年から100年ほどの木が約3㎞にわたって続きます。この辺りには9月頃から咲く開花の速い椿、稀に白花や桃色の花を咲かせる椿が混在します。

赤禿新込間の椿並木

元は防風林として植えられた椿並木。9月下旬ころから早咲きする花、桃色の花が咲くこともあります。

波浮(山口)の椿トンネル

道路両脇に樹齢100年ほどの椿の木がトンネルを作っています。波浮には明治から昭和にかけて与謝野鉄幹、晶子、林芙美子、土田耕平、幸田露伴など著名な文人が多く訪れて作品に残したことから、これを偲んで文学碑が建てられています。

差木地シクボの大木の椿並木

樹齢100~200年の椿の古木が列をなしています。中には幹回り160cmの木もあり、5本が1994年(平成6年)に大島町の保存樹木に指定されています。

波浮と差木地の椿の名所は近いので、散歩ルートでも回れます。

第11回全国椿サミット伊豆大島大会パンフレットには他にもさまざまな椿の名所マップ掲載されていました。現在どのようになっているかの確認はとっていませんが参考に載せておきます。

第11回全国椿サミット伊豆大島大会パンフレットより(2001年)

参考文献

  • 大島椿めぐり 椿の楽園伊豆大島椿ガイド ,大島観光協会,2018
  • 第11回全国椿サミット伊豆大島大会パンフレット,2001
  • 伊豆諸島ロケーションガイド,東海汽船,2018

椿旅 武蔵丘陵森林公園のツバキ園

根岸紅(サザンカ)武蔵丘陵森林公園

<訪問:2017年11月20日(日)晴れ>

松林の下に広がるツバキ園

 埼玉県にある国営武蔵丘陵森林公園は、東京ドームの65倍もの広さを誇る日本で初めて作られた国営公園です。その広大な敷地の一角にあるツバキ園、そして公園のバックヤードとも言える第二苗圃には、ツバキとサザンカが500種もコレクションされている宝庫なのです。
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椿旅 南都伝香寺 散り椿(武士椿)

<訪問:2017年3月26日雨天>

筒井順慶を偲ぶ散り椿

 伝香寺(傳香寺:でんこうじ)の北門をくぐると、小さな庭の右手に大きな椿の木が現れます。伝香寺散り椿、別名武士椿(もののふつばき)。その名の由来は、常の椿と異なり桜のごとく花びらが一枚一枚散ることに由来するといいます。
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椿旅 京都宝鏡寺の村娘

<訪問:2017年3月25日晴れ>

 人形の寺として知られる臨済宗宝鏡寺は春秋二回だけ公開されます。春の公開時には、うまくすれば雛人形と共に椿も見られます。境内の著名な椿は三つ。月光、熊谷、村娘。

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